Egberto Gismonti & Daniel Murray Japan Tour 2026 at 渋谷さくらホール
エグベルト・ジスモンチ&ダニエル・ムハイ Japan Tour2026 at 渋谷さくらホール。
私がジスモンチに本格的にハマったのはここ5年ぐらいのことだ。コロナ禍の時から今にいたるまでずっと毎日YouTubeに演奏動画を一本投稿するという何の稼ぎにもならないアホなことを自分の鍛錬の一環として続けているのだが、その中でたまたまジスモンチの楽曲に出会った。
自分で投稿するどんな演奏動画も誰かしらの演奏を元に譜面を書いてから練習して録音するというプロセスを経るのだが、そのたまたま出会ったジスモンチの楽曲、そしてジスモンチの演奏に激しく心を打たれた。譜面を書きながらなんだこれは、こんな美しくてエキサイティングな音楽があるのか!と驚嘆した。それ以来ずっと彼の音楽の虜である。
私のライブにちょこちょこ来てくれる人はよく知っていると思うが、ここ最近私が自分のライブで自分のオリジナル曲以外で誰かの曲を弾くとなったら大体は
・Egberto Gismonti
・Abdullah Ibrahim (Dollar Brand)
・Thelonious Monk
・Duke Ellington
によって書かれた曲のどれかであることが多い。もちろんそれ以外もやるけれど、この四人が圧倒的に多い。
アブさん、モンク、エリントンはジャズを始めてからずーっと好きな人たちなのだが、そこにジスモンチが割って入ってきた。それぐらい一気に特別な存在になってしまった。
そのジスモンチが東京で生で見られる!ということを知った時に心から嬉しかったのは言うまでもない。絶対見に行く!と決めていた。
チケットの購入には私のミスもあっていささか紆余曲折があったのだけれど、何とか購入できた。良かった。シャララカンパニーの田村さんに超感謝。
ずっと心待ちにしていた公演が昨日だった。
行ってきた。行って良かった。本当に良かった。
会場のお客さんはちょっと異常なまでにミュージシャン率が高く、何人も知り合いに会った。やっぱりみんなジスモンチは見たいんだなあと思った。
昨日の演奏の全編を通じて感じたのは「ジスモンチという人はその存在自体が音楽なんだな」ということだった。
私もピアニストであるのでピアニストとしてのジスモンチを見たい気持ちが強かったのだが、自作の10弦ギターを弾いている時も、それからアンコールで現れて謎の笛を吹いている時も、たまたま楽器が違うだけで「ジスモンチ」という音楽性は何ら変わらなかった。全てが躍動していた。そして全てが美しくてエキサイティングだった。
個人的に思い入れの強い『7 Aneis』や『Frevo』が聴けたのも嬉しかった。これまでに録音物によって聴いたジスモンチが演奏するそれらの曲よりも、目の前で演奏される珠玉の楽曲たちはよりスリリングで、聴いていて激しく興奮した。静かにしなきゃいけないのはわかっていたので我慢していたが、何度も「おおっ…!」とか「ああっ…!」って声が漏れそうだった。すごかった。
共演のギタリスト、ダニエル・ムハイ氏も本当に素晴らしくて、途中でムハイ氏のソロギターのコーナーもあったのだが美し過ぎてため息が出た。ジスモンチとの共演では一瞬ごとに主旋律と伴奏が目まぐるしく入れ替わるような瞬間が多々あって「なんだよおい、神々の遊びかよ」と思った。素晴らしかった。
本編が終了して感無量で拍手をして、アンコールに突入するのかなという場面で「もう十分です。本当に素晴らしかった。ありがとうございます」と思っていたらジスモンチが謎の笛を持って登場して少しだけその笛を吹いてくれた。それもユニークでありながらどこまでも「ジスモンチ」で、いやあ最高だなあと思っていたら、更にアンコールのおかわりに突入した。
ジスモンチがピアノに座って弾き始めててくれたのは私がジスモンチの楽曲の中でも特に好きな『Palhaço』だった。「わー!Palhaçoだー!!!!」と一人で興奮してしまったが、これも本当に美しかった。やっぱり彼の音楽が大好きだと思った。
終演後、私は完全に放心していた。
地に足がついていない感じがしたし、頭が少しピリピリとしていた。会場で会った知り合いたちにも挨拶をしておこうかなとか、チケット購入のことでお世話になったシャララカンパニーの田村さんにもお礼を言ってから帰った方が良いかなとかも思ったのだけれど、多分忙しいだろうしまたメールすればいいやと思ってそそくさと会場を後にした。現実と非現実の境目があやふやになっていて、とりあえず一旦現実に戻ろうと思っていた。ので、すぐに小岩に帰った。
家に帰ってビールを飲んだりしていたら少しずつ現実に戻ってきた。それと同時に「ジスモンチのことをたくさん喋りたい!」という欲求も出てきた。もし近所にジスモンチのことをひたすら話せるジスモンチやブラジル音楽にものすごく明るいキャバ嬢のいる「ジスモンチキャバクラ」があったら確実に行っていたと思う。そんなもんねえけど。仕方なく家で一人でツマミを作りながら晩酌をしてジスモンチの余韻に浸った。
実は少しだけ心配していたことがあった。
もしもジスモンチを生で聴いて感動できなかったらどうしよう、ということだ。
これはジスモンチの演奏がどうこうではなくて、私の脳の不調があってあらゆる感受性が不感症のようになってしまっている時期があったのだ。一か月~二か月前ぐらいがその時期のピークだった。
そこから少しずつ回復してきて「お、だいぶ色んなことに心が動くようになってきたぞ」と思っていたのだが、ジスモンチを聴きに行く前には若干の心配もあった。まだ自分の脳があの状態であった場合に、大好きなジスモンチの音楽を聴いて心が震えなかったらどうしよう、と。そしたらまた自分に絶望するんじゃないかなと思った。
全然杞憂だった。
なんならちょっとぐったりするぐらいに心を動かされた。そこまで動かしてくれなくてもいいのに、ってぐらいに。ジスモンチ、ちょっとおれを感動させ過ぎだぞってぐらいに。
それは昨日の演奏が素晴らしかったこととはまた別に、私の自信を取り戻すことにもなった。良かった、自分の大好きなものを聴いてきちんと感動できる、と。
昨日のあの感動をもって、今日からまた一歩ずつ前に進むことが出来る。
ありがとうエグベルト・ジスモンチ、ありがとうダニエル・ムハイ。そしてコンサートを企画してくださった方々。
最後に私の演奏したジスモンチ楽曲の動画を貼っておく。
「ジスモンチより全然ショボいじゃねえかよ」と思った方。
当たり前だろ!ジスモンチなめんなよ!
いいんだよ、おれはおれなりにやるんだよ。
『7 Aneis』 (Solo Piano)
『Frevo』 (with Tomoki Kajikawa on guitar)
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