コント【歎異抄】
私は自分のことをモラルや倫理観というものが著しく欠落した人間だなと思うことがよくある。
「これは良いことなのでしよう」とか「これは悪いことなのでやめておこう」という倫理観が自分の中からすっかり欠落しているのだ。
人からそのように言われても「そうなんですか。よくわかりません」となってしまう。
かと言っていわゆる「悪いと言われていること」を積極的にやるかと言えばそうでもないし、「良いと言われていること」をしている時も度々ある。
例えば私はコンビニや飲み屋などで店員に対して低姿勢かつ礼儀正しく接するように心掛けているが、これは「良いこと」をしているのではない。逆にそういう場において高圧的で横柄に振る舞う人間がものすごく嫌いなので、自分はそうありたくないという利己的な欲求によって低姿勢に振る舞うようにしている。
タバコのポイ捨てに関してもそうだ。タバコをポイ捨てする人間のことを「限りなくダサい」と思っているので自分ではやらない。それだけのことなのだ。
なぜこのような価値観になってしまったのかと言うことをふと考えた時に、それはおそらく私が若い頃から今に至るまで【歎異抄】という本の影響を強く受けているからだと思うに至った。
【歎異抄】はご存知の通り浄土真宗の教典であるが、その中にこんな一節がある。第十三条であるが、私なりに現代語訳していきたい。師匠親鸞と弟子の唯円の会話である。
親鸞「唯円よー、お前さー、おれの弟子だよな?」
唯円「いかにもでございますっっっ!」
親鸞「じゃーさー、おれの言うことなら何でも聞ける?」
唯円「ロンモチでさぁ!師匠!」
親鸞「オッケー牧場。じゃーさー、今からさくっと1000人殺してきてくれや」
唯円「(こいつ何言ってんだよ…マジかよ…正気かよ…なんて答えんのがこの場合の正解なんだよ…)」
親鸞「おれの言うこと何でも聞けるって言ったべ?ほれ、早く殺してこいよ?」
唯円「すんません…無理っす…」
親鸞「あん!?無理!?」
唯円「はい…無理っす…てか、1000人とかじゃなくて1人でも無理っす…すんません…」
親鸞「だよな」
唯円「はい」
親鸞「ってことなのよ」
唯円「はい?」
親鸞「お前が1000人どころか1人も殺せないのは当たり前なの。だって殺す理由もねーんだもん。だろ?」
唯円「はい。誰かを殺す理由もありませんし、意味がわかりません…」
親鸞「そうなんだよ。お前が今人を殺さない理由は、お前が"良い人"だからじゃなくて、単に人を殺す理由がないからなのよ。意味がわかんねーから殺せねーのよ」
唯円「はい。理由がありませんし全然意味がわかりません」
親鸞「てことは、逆にどういうことかわかるか?」
唯円「逆に、とは?」
親鸞「理由があれば殺しちまうってことよ」
唯円「そういうことになりますかね」
親鸞「ま、これはあくまでもそういう可能性もあるって話だけどな。誰も殺さないって心に決めていても、人を殺しちまうことはある。そういう可能性を持ってんだよ、おれたちはOROKAMONOだから」
唯円「J-POPのタイトルみたいに言わないでくださいよ、師匠」
親鸞「だからさ、心が良いからオッケー、心が悪いからウンコ、とかじゃねーんだよな」
唯円「はい」
親鸞「おれたちレベルの心の善し悪しなんつーのはマジで五十歩百歩っつーか目くそ鼻くそっつーか、そんなもんでよ。どんなに"良い人"に見える奴でも色んな理由やタイミングさえ合っちまえば人を殺しかねない。そんなモンスターをおれたちはみんな心の中に飼ってんのよ」
唯円「はい」
親鸞「だからそんな目先の善悪に惑わされんな。アミダのアニキはもっと広い心でおれたちを救ってくれっかんよ!」
唯円「ですね!師匠!」
親鸞「おれたちはBOMP(凡夫)だ!」
唯円「BUMP OF CHICKENみたいに言わないでください」
親鸞「それはそうと唯円、さっきおれの言うこと聞けるって言ったべ?」
唯円「は、はい」
親鸞「わりーけどちっとコーラ買ってきてくんね?喉渇いちった」
唯円「そんぐらい自分で行ってきてくださいよ!」
という一幕である。
【歎異抄】は一貫して「おれたちの善悪とかはしょーもない」ということを言っているのだが、ここでもその価値観は色濃く反映されている。
こういう本の影響を受けているから「善い」と「悪い」を基準に行動を決定しないようになってしまったんだろうなと自分でも考えている。
こうやって書いていたら「コント【歎異抄】」の台本をいつか書いてみたくなってきたな。
主題歌はもちろん光GENJIに「勇気100%」を「そうさ100パーセント他力ー、もう念仏しかないさー」と歌詞を変えて歌ってもらいたい。
もしくは広末涼子に「マジでOujouする5秒前」を歌ってもらってもいい。
とってもとってもとってもとってもとってもとっても大往生ー。
今日の演奏動画。
Randy Breckerの作曲した『There's A Mingus Amonk Us』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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