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2024年7月25日 (木)

プロの音楽家とは

我々音楽家の世界にはプロの免許のようなものは存在しない。

それが良いのか悪いのかという議論は置いておいて、とにかくその類いのものは明確には存在しない。

なので自分で「プロです」と宣言したその日からその人はプロの音楽家ということになる。

私自身のことで言えば、まだ26歳の大学9年生(!?)だった頃に、今は亡きジョニー大倉さん(元「CAROL」)のツアーバンドを半年だか一年だかぐらいやらせて頂いて、「こんだけ有名な芸能人の方と一緒にやらせてもらってアマチュアですってのも無理があるだろ」と思ってその辺から「おれはプロです宣言」をした記憶がある。

なのだが、その頃はほとんどピアノが弾けなかったし実は譜面もロクに読めなかった。音楽的な知識も皆無に近かった。今はその頃に比べれば多少なりともピアノは弾けるし譜面も読めるし音楽の知識もついてきた。今から考えると「なぜお前はそのレベルでプロを名乗れるのだっ」と思うが、アホだったのだからしょうがない。

ということは、想像に難くないと思うのだがいくら自らプロを宣言したところで実力が伴っていなければそこから仕事が来なくなる。また、仕事が来たとしてもすぐにクビになる。そりゃあそうだ、実力が伴っていないのだから。
客が料理店で美味くない料理に金を払いたくない、もしくは一度食べてみて「こりゃあもういいや、再訪は無し」となるのと同じだ。
案の定私にはそんなに仕事が来なかったし、来たとしてもすぐにクビになっていた。今考えればこれは極めて自然な成り行きなのだ。

それでも何とか工夫を重ねたり貧乏を受け入れたりしながら20年近くやってきた。

先日「嘘から出たまこと」という言葉を久しぶりに聞いた時にこういった自分の過去のことを思い出した。

約20年前に私が「おれはピアノ弾けます、プロです」と言ったのは嘘とまでは言わないけれど確実にハッタリではあった。
嘘やハッタリがあっさりとバレて実力不足が露呈して苦労するハメになるのだが、それでも何とか帳尻を合わせてギリギリのところで踏みとどまってきた。

私自身はプロだろうがアマチュアだろうがどっちでも良いと思っているのだが、多分私はプロのピアニストだ。嘘やハッタリがいつの間にか本当になってしまった。

もちろん私のような今でもヘタクソなピアニストに対して「あんなやつはプロとは呼べん!」と言う奴らもいるだろうが、そういう奴は相手にしていないので好きに言っておけば良い。私は私を好きな人たちの為に努力することに忙しいので、私のことを嫌いな人の為に割いているような時間はない。そんな時間があったら河原で一人で飲酒していた方が遥かにマシだ。

嘘から出たまことの話はこれからもまだまだ続く。

徹頭徹尾冗談みたいな毎日だが、これはこれで良いや。


今日の演奏動画。

Dizzy Gillespieの作曲した『Tanga』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。

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