永瀬が「永瀬」であるということ
オリンピック柔道4日目。
昨日の試合には以前より特別に応援している選手がエントリーしていた。
男子81㎏級の永瀬貴規選手である。
手足が長くて遠い間合いから試合をコントロールする永瀬選手の柔道は、私のようにドラえもんぐらい手足が短い人間には再現不可能な柔道なので、彼の柔道スタイルを参考にすることはほとんどない。
しかし、ここ何年も私は永瀬選手を日本人柔道選手の中では一番に応援してきた。
なぜならば永瀬選手は「永瀬」であるからだ。
様々な柔道選手たちが「永瀬選手こそが最強の柔道家だ」と口をそろえるのには理由がある。彼らは永瀬選手の「永瀬」ぶりを近くで見てきているからだ。
誰よりも早く稽古場にやって来て、そして誰よりも遅くまで一瞬も休むことなく黙々と稽古をこなす永瀬選手。
大きな試合が終わった翌日にも稽古場にやってきて稽古をする永瀬選手。
オリンピック選手としてSNSを開設するも、その自身のアカウントにはロック(鍵)をかけているので一般の人は見ることが出来ない永瀬選手。
一説によれば、あの大野将平選手が引退を決意したのも「永瀬みたいにあんなに練習できるモチベーションが今は続かないから」ということらしい。
そんな「永瀬」ぶりに多くの柔道家たちが魅了されてきた。私もその一人だ。
勝ち負けが何よりも重要な要素である柔道という競技において、「勝つか負けるか」という価値観ではなく「永瀬であるか永瀬でないか」という価値観で見れる選手はこの選手を置いて他には存在しない。
東京オリンピックでは金メダルに輝いた永瀬選手だったが、その後は勝ちに恵まれなかった。大きな国際試合でも国内の試合でもなかなか勝てない日々が続いた。きっと苦しかったと思う。しかし、その苦しい期間もまた永瀬選手は「永瀬」として過ごしてきたのだ。
一日も休まずに稽古を積み、周囲の声などどこ吹く風でマイペースに鍛錬を重ねてきた。それこそが「永瀬」であるのだ。
昨日のオリンピック柔道男子81㎏においては、永瀬選手はどこまでも「永瀬」だった。
身体のキレも素晴らしかった。攻守ともにハイレベルな柔道を見せてくれた。
決勝では相手の一瞬のスキをつく谷落で見事な一本を奪って金メダルを獲得した。私が自宅のテレビの前で「ながせーーーーーーー!!!!!!」と絶叫したのは仕方のないことだ。解説の大野将平氏も「これで永瀬最強説が立証されました!」と非常に嬉しそうだった。
表彰式では金メダルを獲得したにも関わらず、銀メダルや銅メダルの選手たちに隠れて後ろのほうでもじもじしながら笑顔を浮かべている永瀬選手は、どこまでも「永瀬」だった。
永瀬選手、おめでとう。そして「永瀬」でいてくれてありがとう。
今後も私はずっと「永瀬」選手を応援し続ける。
今日の演奏動画。
John Coltraneの作曲した『Alabama』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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