遠回りも悪くない
ジャズには色んな「流派」がある、と思っている。
根底の部分では結び付く共通点も非常に多いのだけれど、方法論が違ったり、語彙が違ったりと色々ある。私の場合はそういう様々な流派をひっくるめて大きな意味で「ジャズ」と呼んでいる。
ここ数年、普段から自分が演奏している流派の「ジャズ」以外の研究を定期的にやる。一昨年はレニー・トリスターノやリー・コニッツなどがその代表格とされる「クール・ジャズ」という流派を研究してみたし、昨年はブラジル音楽をかいつまんで研究してみた。一年やそこらの研究でその全貌を知ることは到底出来ないが、それでもこれまでに知らなかった方法論や語彙を知ることが出来て自分にとってはとても有意義な研究だった。
ちょっと前のブログにも書いたのだけれど、今年はかなり古い流派のジャズの研究に勤しんでいる。ブギウギやストライドやブルースなどに分類される流派である。元々好きな流派なので研究も楽しい。
今日もレッスンとレッスンの合間の時間に直近のライブの為の練習をやってから、その古い流派のジャズの練習も少しやった。
この古い流派のピアノは左手に非常に特徴があって、一言で言ってしまえば左手が結構忙しい。あれこれとやることが多いのだ。なので技術的にもかなり難しい。
しばらくこういったスタイルのピアノの練習をやっていなかったので、さて左手がどれぐらい動くかなーと思っていたのだが。
実際には私の左手はよく動いてくれた。何なら以前よりもスムーズに動いた。あれ?最近このスタイルやってなかったのに不思議なもんだな、と自分でも少々驚いた。
これは多分なのだけれど、そういった古い流派のジャズを直接練習するので無しに、ちょっと遠回りに見えるような違う流派の音楽を練習していたからではないだろうかと思っている。他の流派の音楽でも左手が忙しい時はあるし、リズムのツボも様々に違う。そういうことを少しずつ身体に取り入れていったことが私の音楽力を総合的に高めてくれたのかもしれない。
こういうのは非常に面白いもので、色んな練習が相互的に補完し合って思わぬ部分が強化されるということが起きうるのだ。
例えば数学に強くなりたいと思って数学の勉強をするのももちろん構わないのだが、国語の勉強をみっちりとやることで読解力や思考力が養われて結果的に数学の問題が以前よりもスムーズに解けるようになる、ということもあるだろう。そういう感じに近い。
色んなことが繋がっている。
世界中にはまだ私の知らない色んな音楽が存在するが、そういうものを一つずつ丁寧に探っていきたい。
色んなものが繋がって、その時にはまた知らない景色が見えるかもしれない。
遠回りも悪いものではない。
今日の演奏動画。
Freddie Hubbardの作曲した『Up Jumped Spring』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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