ブルース大好きおじさんによるジャズピアノレッスン
朝からレッスン。
今日はいくつかの気付きがあった。
四拍子の中で三連符を感じるのが苦手だという生徒がいて、「ふーむなぜだろう」と考えてみた。三連符とは一拍を三分割するリズムのことで、この三連符を感じていると「ワンツースリーフォー」の四拍子のリズムは「わ・あ・ん / つ・う・う / すり・い・い / ふぉ・お・お」となる。
私はぶっちゃけ三連符を感じるのが全く苦手ではないのだが、ここには思い当たるフシがあった。
むしろ三連符を感じすぎてしまってシャッフルのようにハネすぎる癖に昔から悩まされてきたのだが、これはおそらく私がジャズを始めるよりも前にブルースを好きになったからだ。
ということで「よし!今からブルースを聴こう!」と言ってブルースのレコードを聴いた。ジャズにも三連符は確かに存在するのだが、それが色んな形に変化する。それに対してブルースはモロに三連符がリズムの中心としてある。非常に三連符がわかりやすい音楽であるのだ。
聴いたレコードはこれ。
Otis Spannのレコード。これのB面。
「'Tain't Nobody's Bizness If I Do」というスローなブルースから始まる。Spannのピアノもボーカルもめちゃくちゃカッコいい。Sammy Lawhornのギターもむせび泣きまくる。聴きながら私はずっと「いやー、ヤバいわー、カッコいいわー、エモいわー、アツいわー」と小学生並の語彙力で感想を言う。
そして二曲目の「Nobody Knows Chicago Like I Do」では軽妙なシャッフルビートが炸裂する。軽妙な中にもブルースマン独特のねっとりとした重さがあって、これがまたたまらんカッコいい。私は「たまらんわー、エグいわー、鬼だわー」と引き続き感想を述べる。
この辺が終わったあたりで「さてそれでは三連符をとってみよう!」と言って一緒にやってみたらあっさり出来た。
「めっちゃちゃんと三連とれてるじゃないっすか」と言ったら生徒は「あれ、ホントですね」と言ってくれた。
これは理由は簡単だ。10分ほどひたすらブルースを聴きながら三連をとるトレーニングをしたからだ。それによって身体の中に三連が「入って」いったのだ。身体の中にないリズムを数えながら歌うことはなかなかに難しいが、「入って」しまえば極めて自然に歌える。
ということは、改めて実感したが、音楽のトレーニングにおいて「何はなくともまず聴くことが大事」なのである。
聴いたことがないものは弾けないし歌えない。
たとえ理屈と構造を学んでも、たとえ譜面が読めても、その音楽が頭の中で鳴っていない限りは決して弾けないし歌えないのだ。
もう長いこと音楽のレッスンを生業の一つとしてやってきているが、「聴く」ということに勝るレッスンはないというのが私の実感だ。私も毎日色んな音源を聴いてそれを採譜するが、これは私がレッスンを受けているのとほとんど同じことなのだ。
今日に関して言えば、ブルースのレコードを聴いたことによって生徒は三連がとれるようになったし、私は「ヤバいアツいエモいエグい」と言うだけの単なるブルース大好きおじさんになったので、双方に幸せな結果になって良かった。
Otis Spannはマジでアツい。
今日の演奏動画。
Harold Arlenの作曲した『One For My Baby』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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