ニューヨークに行かずにインドに行った21歳のアホ
久しぶりに「本日のレコード」。Phineas Newborn Jr.の【Harlem Blues】。
ベースにRay Brown、ドラムにElvin Jonesという、さながら「オールスター」感のあるメンツだけど、やっぱりこのアルバムは文句なしに好き。フィニアスのピアノというのは私の理想的なピアノの一つの完成形だよなあと聴くたびに思う。聴いていると単純にテンションが上がる。理屈じゃない。
さて、今日の演奏動画は一昨日から引き続き先日のソロピアノライブからのライブ動画なのだけれど、数週間前にもアップしたオリジナル曲の『ガンゴトリーの谷~A Valley of Gangotri~』。数週間前にアップした時は「今度のライブでやる時の練習を兼ねてアップしよう」と思っていたけれど、こっちが本番のテイク。
この間のライブでこの曲を演奏した後に喋ったことなのだけれど、この曲について。
ガンゴトリーというのはインドの北部、ネパールとの国境のあたりにあるヒマラヤ山脈の山間部の村である。この村の標高が既に3415mであるので、この時点で富士山の山頂とほぼ同じぐらいに高い。
私はこの村を2001年に訪れた。
本当はこんなところに行くつもりではなかった。
二十歳ぐらいの時にほとんどピアノなんて弾けないのに「おし、ジャズピアニストになるか」という謎の決心をした。今考えても実に謎であるが、そう決心してしまったのだから仕方がない。頭がものすごく弱かったことは間違いない。
「ジャズピアノをやる為にはアメリカのニューヨークに行ったら良いらしい」ということを人づてに聞いて「おし、ほんじゃニューヨークに行くか」と思って大学を途中でほったらかして(休学して)ニューヨークに行くためにアルバイトで金を貯め始めた。
ところがその貯金の最中に、深夜にやっている「世界の絶景を行く」みたいなテレビ番組で「ガンジス川の源流を辿る」というものを観てしまった。ガンジス川の源流はインドのガンゴトリーからヒマラヤの山を歩いて行った先のゴームクというところだということだった。
「ここに行きてえ」
私はそう思ってしまった。
何なんだろう、若い頃の私のフットワークの軽さと行動力と頭の悪さは。
ということでニューヨークはいつでも行けるから後回しでいいやと思ってインドに旅立ってしまった。
行ってしまったから仕方ない。後回しでいいやと思ったものの、その後に私はまだニューヨークを訪れたことはないし、今後も行くような予感はあまりない。わからないけれど。
インドの首都ニューデリーから入国して、そこからバスを乗り継いでまずはリシケシュならびにハリドワールといった村に向かった。この辺はかのビートルズがインドにものごっついかぶれていた時期にヨガの聖地として訪れていた村としてもよく知られている。私はヨガは全然やっていない。ガンジス川で水浴びをしながら遊んでいただけだ。
そこから更にバスで山奥へと進んでいってガンゴトリーに到着した。
結局ガンジスの源流にも行った。山道を歩いて行ったのだ。
この辺の話は長くなるのでまたいずれ。というか昔このブログにも書いたことがあるような気もするし、まあいいや。
「ピアニストになろう!」と謎に思い立ち、「ニューヨークさ行くべ!」と行動していたのに、「なぜかガンジスの源流にいる!」となったのが今から22年前のことだ。
でも結局ピアニストになったし、人生はよくわからん。
あと私の人生はこういう風に振り返ると実にふざけているし、ものすごく「ちゃんとしていない」と思う。
なので私は人に向かって「ちゃんとしろよ!」と注意する権利は一切ない。私は昔からずっとちゃんとしていないし、もちろん今も全然ちゃんとしていない。
そんな思い出の地、ガンゴトリーの名前をつけた曲。
久しぶりに弾いてみたらそこそこ良い曲だった。
今日の演奏動画。
2023年11月7日(火)に東京小岩「BACK IN TIME」で行われたソロピアノライブよりオリジナル曲『ガンゴトリーの谷~A Valley of Gangotri~』の動画です。
撮影:小沢 一人
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