鬼門突破
旅を終えて帰りの東京へ向かう新幹線の中から書く。
新幹線が早過ぎてビビっている。これを書き始めた今時点で新幹線は三島駅を出発した。京都を出発してたったの二時間半でもう三島に着いてしまったのだ。
東京〜京都間は9〜10時間をかけての移動、というのが身体に染み付いているので、久しぶりに乗る新幹線こだまのこの移動スピードは少々面食らう。たったの三時間半で京都〜東京間の移動を達成してしまうなんて、私からしたらほぼ瞬間移動みたいなものだ。
新幹線に乗っているということで、今回の旅は普段の旅とは少々趣を異にする。普段は青春18きっぷもしくは高速バスで移動して格安のドミトリーに泊まるのが常だが、今回はそうではなかった。「そうできなかった」というのが正確なところだ。
毎年毎年、11月末のこの時期は京都の宿の値段が冗談みたいな高騰を見せる。そう、紅葉シーズンのせいだ。これについては私はいつも紅葉に対して「てめえ色づいてんじゃねえよ、狩るぞこの野郎」と思う。本来は大変美しいはずである秋の風物詩の紅葉は、私にとっては地獄のインフレ誘発装置であり、もはや憎悪の対象なのだ。
毎年毎年酷い有り様の紅葉インフレであるが、今年は更に酷かった。普段宿泊する一泊2000円ぐらいのドミトリー宿が10000円ぐらいになっていた。絶句した。そして「誰が泊まるかそんなもん!」と強く思った。
移動手段に関しても今回は難儀した。水曜日の昼に東京から京都へ移動する高速バスは5000円弱のものがあったのでそれで手を打ったが、帰りの高速バスが夜行便も昼行便も全て10000円近くしていたので、それならばほぼ値段の変わらない格安新幹線プランである「ぷらっとこだま」を採用することにした。そういう訳で私は今非常に久しぶりに新幹線に乗っている。
宿に関してはまずは「完全に諦める」というところからスタートした。
最安値のドミトリーが10000円。即決で「無理!」となった。
となれば代替案としてはネカフェやサウナということになるのだが、その辺はみな同じようなことを考えるはずだ。ネカフェやサウナが満室で入れないということも十分に想定できた。
「貧乏旅行のベテランを舐めるなよ」
私は何も怯えてはいなかった。
10代の頃から今に至るまでずっと金はないが時間はある。金はないが時間はある人間にしか出来ないタイプの貧乏旅行をこれでもかというほどに重ねて来たのだ。
宿もない、ネカフェもサウナも満員だ、ではどうしよう。
「路上で寝ればいいんです」
純から「電気が無かったら暮らせませんよ!夜になったらどうするんですか!」と言われた時の五郎が「夜になったら寝るんです」と答えた時の勢いで私はそう言った。
これまでに幾度となく路上で寝てきた。むしろ路上こそが私の寝床だ。地球が全て寝床なのだよ。
スケールの大きなカス発言をしつつ荷造りの段階で私はバックパックに寝袋を詰め込んだ。
結局はその寝袋が活躍することもなく一昨日、昨日は知人の家にご厄介になることになったし、今日は朝までやっている友人が経営する居酒屋で飲むことを宿代わりとした。
↑友人の廣瀬が経営する居酒屋「ロッジ」。営業時間は深夜0:00〜6:00。
たくさんの方々のご厚意や愛情に助けられつつ甘えつつという格好ではあるが、結果的に「なんとかなった」。交通費も宿泊費も洒落にならないほどのインフレーションを起こすこの地獄の紅葉シーズンを乗り切ったと言っていい。繰り返すが今回に関しては他人のご厚意あってのものだが。
恐らくは今後もこうして人に甘えたりあるいは路上で寝たりしながら私の貧乏旅行道は続いていく。
もう少し金があればとも思うが、金を稼いでる暇があったら好きなことをして遊びたいので今後も極力働かない。音楽と柔道をしながら生きていかなければならないし、働いているほど暇ではない。なので貧乏は元より覚悟の上だ。
ということで毎年鬼門となっている11月末の京都ツアー、なんとか無事に終えることができました。
関わってくださった全ての方々に深く感謝いたします。
今日の演奏動画。
Billy Taylorの作曲した『Easy Walker』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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