サービスを受けることは当たり前のことではない
先日のこと。
「餃子の王将」でラーメンを食べていたら、隣に座っている客もラーメンを食べていたのだが、その客がラーメンにレンゲがついていないことに気付いて、店員に向かって「ちょっとレンゲないんだけど」と言って持ってこさせていた。
心の狭い私はこれに何だかイラっとしてしまった。
「レンゲお借り出来ますか?」で良いだろ、何なんだそのエラそうな態度は、という感じで最初はイラっとしていたのだが、店を出てからもそのことを考えていたら、私が瞬間的に覚えた不愉快な感情の正体が少しずつ見えてきた。
おそらく「サービスを受けて当たり前」という態度が私の癪に障ったのだ。
王将のラーメンにデフォルトでレンゲが装備されているのかどうかはわからない。しかし、極論を言えばレンゲは無くてもラーメンは食べられる。あればあったで便利、というぐらいの代物だ。
さすがにラーメンに麺が入っていなかったら「ちょっとこれ麺入ってないんですけど」と言っても良いだろうが、レンゲがついていなかっただけではそのラーメンを「不完全だ」と糾弾する根拠にはならない。
店側からすれば「なくてもいけるっちゃいけるんだけどあった方が便利だろうから付けとくか」という代物がレンゲであり、それは店の親切心によって付いているものなのだ。
そういった店の親切心によって付加されたサービスの有無を客側がどうこう言うということに対して私はイラっときたのだ。付加的なサービスを当たり前だと思うな。私の感情の正体はこれだった。
こういうことにイラっとくるのはひょっとしたら自分の職業に関係があるかもしれない。
例えばピアノのレッスン。
私の都合によってレッスンをキャンセルした場合などはもれなく返金もしくは振り替えなどの処置を取るのだが、生徒の都合によるキャンセルは基本的には返金も振り替えもせずにそのままにすることが多い。たまに「この日のこの時間でしたら振り替えは可能ですよ」とピンポイントで日時を指定して振り替えをすることはあるが、それは必ずしも毎回ではない。
現在私の教室に通ってくれている生徒さんたちはその辺の事情は十分に理解を頂いているので何も問題はないのだが、まれに「え?振り替えしてくれないんですか?」と言ってくる人もいる。
「はい、しません」と言うと「前に通っていた教室ではしてくれたのに」と言われるので、そういう時には即答で「ではその教室に再度通ってください」と答える。他所はどうだか知らないけれどウチは違うのだ。なのでそういう人はすぐに辞めていく。私もそういう人は来ていただかなくて結構、というスタンスでずっとやっている。
ピアノレッスンの振り替えというのは各教室の規約によって様々なのだが、私のところでは受け付けていない。場所によっては「無料振替いつでもOK」を教室のアピールポイントにしているところもあるが私のところは違うのだ。
この振り替えもあくまでも教室側の親切心により行われている。あらかじめ予約を入れて確保しておいた時間を一旦破棄して別の日程を組むのだから、教室側にはデメリットしかない。それでも少しでも生徒にプラスになることがあればという親切心でそうやって振り替えを実施する。いわばラーメンの「大盛り無料」とか「ネギ入れ放題」なんかに近い。本来は有料なのだがそれを赤字覚悟で無料にしますよ、ということなのだ。
こういったサービスを当たり前だと考えるならばそのサービスを提供する場所に行けば良いし、それをどこでも要求するのは的外れだ。
私は「無料振替いつでもOK」を標榜している教室に対しては何の批判もない。単に「大変そうだなあ」と思うだけで、そこが悪いとは思わない。ただ私の教室は違うというだけで、それがイヤならば来てもらわなくて構わないというだけの話だ。私の店は大盛りもネギも有料なのだ。
自分のやり方こそが正しいなどとは全く思わないが、私には私の考えがあってそのようにやっている。多分これからもずっとそうする。
ラーメンのレンゲからそんなことを考えてしまった。
なのでラーメンのレンゲを借りたい時は「すみません、レンゲをお借り出来ますか」と丁寧に言おう。
今日の演奏動画。
Chick Coreaの作曲した『A Japanese Waltz』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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