« 清里ピアノ旅日記後編 | トップページ | 痛い愛情表現はやめろ »

2023年8月26日 (土)

譜面の束

譜面を一枚書く労力については多分世間の多くの人よりも私の方が理解していると思う。

おそらく多くの方が想像されている以上にめんどくさい。

音源を聴いてそれを採譜するだけでも相当な労力になる。

だが、私はそれを普通の人たちの5倍~10倍ぐらい短い時間で書くことができる。なぜならばそれを毎日ずーっとやり続けているからだ。

ひょっとしたらそれは「簡単にやっている」ように見えるかもしれないが、全然簡単ではない。ある種の特殊技能だ。

なので「ちょっとちゃちゃっと簡単に譜面書いてくれない?適当でいいからさ」というオファーが稀にくることがあるが、「ちゃちゃっと簡単にも適当にも書けません」と言って断る。譜面を書く時には基本的に金銭を要求する。当たり前だ。これが仕事なんだから。

これがオリジナル(自作曲)を書くとなるとさらに大変だ。

他の人がどうなのかは知らないが、私はそんなに簡単に作曲が出来るわけではないので、一曲を書くのに膨大な時間がかかる。丸一日10時間粘って書いてみたものの8小節も書けないということもザラだ。書いては消して書いては消してを何回も繰り返していく。

昨日、某所で自作曲の手書きの譜面の束を見た。

最近亡くなったとある音楽家の遺品だそうだ。亡くなった後に彼の部屋から発見されたらしい。

それはとんでもなく膨大な量だった。

一朝一夕で書ける量ではない。毎日少しずつ、文字通り一枚一枚積み重ねてきた譜面の束だった。

几帳面な字で綺麗に書かれたその譜面の束は、丸々その人が音楽家として生きてきた人生の証拠だった。

身体が衰えても創作への意欲を燃やし続け、毎日毎日コツコツと書き続けられたその譜面の束を眺めていたら涙がこみ上げてきた。

翻って私は自分が音楽家として今後どう生きていきたいのかに考えが及んだ。

私は誰に何を言われようとも地道にずっと積み重ねていきたい。「毎日」を「死ぬまで」である。

自分の可能性や限界を誰かに規定させることなく、地道に積み重ね続けた偉大な音楽家に敬意を示したい。


何をするかって、積み重ねるんだよ。


私はそういう風に生きていきたい。

今日の演奏動画。

Bernice Petkereの作曲した『Lullaby Of The Leaves』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。

|

« 清里ピアノ旅日記後編 | トップページ | 痛い愛情表現はやめろ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 清里ピアノ旅日記後編 | トップページ | 痛い愛情表現はやめろ »