おなかちゃんは気合いが違う
流行のファッションについてまるっきり疎い私であるが、最近若い女性の間でおなかを出すファッションが流行っていることぐらいは知っている。外を出歩くとかなりの高確率でおなかを出した若い女性を見る。
私は彼女たちのことを「おなかちゃん」と呼んでいる。
昭和生まれの私などからすると「おなか冷えないかな、大丈夫かな」と少々心配になってしまうのだが、基本的には「人は自分がしたい格好を誰にも遠慮せずにすれば良い」と思っているので、彼女たちが自分のしたい格好をしていることに私が口を挟む余地は微塵もない。誰に何を言われようと自分がしたい格好を好きにすれば良いのだ。
しかしそんな私の心配をよそに、おなかちゃんたちはだいぶ気合いが入っていることを私は知っている。
去年のことだったが、奥多摩にある鍾乳洞に一人でてくてくと行ったことがある。青春18きっぷが余っていたので無目的に日帰り旅に出ようと思ったのだが、そう言えば奥多摩に鍾乳洞があったな、と思って一人で行ったのだ。確か夏のことだったと思う。
奥多摩の山の中にある鍾乳洞までは奥多摩駅からバスと徒歩で行くのだが、夏なのでそれなりに暑かった。私も額にじっとりと汗をかいていたと思う。
鍾乳洞に到着してさて、では中を探検しようと思った時に、おなかちゃんがいた。
二人組の若い女性であったのだが、その片方がおなかちゃんだったのだ。
「大丈夫かなあ」と私は思った。
ご存じの方もいるだろうが、鍾乳洞の中はかなり涼しい。涼しいというよりも寒い。ほとんど冷蔵庫の中と同じような状態なのだ。
その寒さの中でおなかちゃんはおなかを冷やさないだろうか、と勝手に心配になった。
もしも鍾乳洞の中でおなかちゃんが「ちょっとマジ寒いんだけどー!」と言っていたら私の上着を貸してあげようかな、などと考えていたが、それは完全に杞憂だった。
鍾乳洞の中でもおなかちゃんは「ヤバ!マジ神秘的!」とか「ウケる!声めっちゃ響くんだけど!」とか声を上げながら元気いっぱいだった。
きっとおなかちゃんは知っていたのだ、鍾乳洞の中が寒いことも。そしてそれを知りながらあえて「おなかを出す」という選択肢を選んだのだ。全ては覚悟の上だったに違いない。
おなかちゃんの気合いは超すごい、とその時私は知ることとなった。
そして今日、街中で見かけたおなかちゃんであるが。
おなかちゃんたちは自らのおなかを出すために節制に励み無駄な脂肪を削ぎ落したおなかを出しているのがほとんどであるのだが、今日見かけたおなかちゃんは、大分ふくよかなおなかを悪びれずに出していた。私の頭の中を「太鼓腹」という言葉がよぎった。
ここに関しても極めて立派な気合いを感じ取ることが出来た。
引き締まったおなかを出すことが全てではない。引き締まっていないおなかすらをも出していくのだという強靭な覚悟である。
こうと決めたら決して引かない。
引かぬ、媚びぬ、省みぬ。
まるでサウザーのごときその気高きおなかちゃんに私はついつい一礼をしたくなってしまったのだが、怪しまれると嫌なのでやめておいた。
おなかちゃんの気合いはすごい。
私もおなかちゃんのように気高く生きていきたいと思った。
今日の演奏動画。
Archie Brownieeの作曲した『Save A Seat For Me』をソロピアノで弾いてみました。リードシート(譜面)も添えてあります。
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