市川修先生の作曲した『Ayano』と『Akiho』を弾く
現在一緒にバンドをやっているドラムの市川綾野さんは、ご存知の方も多いかも知れないが、2006年に亡くなった私のピアノの師、市川修先生の娘だ。
なので彼女が小学生だった時から付き合いがあるし、なんなら彼女が中学生だった時には私が家庭教師をしていたこともある。なので私の感覚としては血こそ繋がっていないけれど「親戚の子」に近い。
その彼女と今は一緒にバンドをやっているというのも不思議な縁を感じるのだが、彼女がある時私たちのバンドの練習に「この曲をやってみたい」と曲を持ってきてくれたことがある。
市川修先生が書いた『Ayano』という曲だった。
もちろん、娘の為に書いた曲だ。
その曲をやってみたいと言われた時に「それってどういうことなんだろう」と私の頭の中で感情が少し渋滞した。
彼女からしたら、音楽家としてとても尊敬しつつも深い愛情の対象であった父。今は亡きその父が自分のことを愛おしく思いながら書いた曲を実際に自分で演奏してみたいというのは一体どういうことなんだろう、と。
あまり例の多いケースではないと思う。もちろん私にも経験のないケースだ。
数奇な物語を思いながら私は「いいよ、やろう」と答えた。
ただし私は一つだけ条件を出した。
市川先生が書いたたくさんの曲の中で『Ayano』という曲ともう一つ、『Akiho』という曲がある。これを必ず一緒にやろうというのが私が提案した条件だった。
これは綾野さんの妹、市川先生のもう一人の娘明穂さんに向けて書いた曲だ。
なんなんだろう。自分の師匠に対して大変失礼な言葉とは承知しつつも…親バカなのかな…
片方だけやるのは不公平な感じがするという私の思いから提案したその条件をバンドメンバーが快諾してくれたので、市川先生の書いた『Ayano』と『Akiho』はそれ以来私たちのバンドのレパートリー曲となっている。というか、我々がやらんで誰がやるんだ、という曲だと思っている。
父を思い、父が自分に向けた曲を演奏する一人の演奏家としての娘の物語。
もちろん、一緒に演奏してくれるベースの鶴賀くんにも彼の歩んできたここまでの物語があるし、そして私にも私の物語(そこには当然市川先生の姿もある)がある。
私たち三人の物語と、市川修先生の物語が交錯する。
それはとても素敵なことのように私は感じる。
多分今週のトリオのライブでもこの曲をやろうと思っているので、練習がてらこの曲を録音したかった。出来ればピアノを調律した直後に、真っ直ぐな気持ちで弾いてみたかった。
なので先日ピアノを調律した直後にこの2曲を弾いてみた。
これは私が「一人(二人)で」紡いだ物語。
今週末には「三人(四人)で」新しい物語を紡ぐ。
是非観に来て頂きたい。
5月27日(土) 京都伏見 レミューズカフェ
075-622-0014
http://lesmuseskafe.com/
【福島剛トリオ】
piano:福島剛 bass:鶴賀信高 drums:市川綾野
19:00~start music charge:2500円
今日の演奏動画。
私の師、市川修氏が二人の愛娘の為に書いた『Ayano』と『Akiho』を二曲続けてソロピアノで弾いてみました。
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