「武」勇伝
昨日は柔道の日。
先週の土曜日が祝日で稽古がなかったため、二週間ぶりの稽古。とは言え足の怪我がまだ完治していないので先々週と同様にみんなが稽古をしている道場の隅っこで基礎運動を繰り返させてもらう。
それだけで我慢しておくつもりだったのだが、どうしても我慢できずに最後に二本だけ受けのみの乱取りと組手のみの乱取りをさせていただく。これだけでもめちゃくちゃ楽しかった。やっぱり柔道は本当に楽しい。
稽古の後は先生方と行きつけの居酒屋で柔道談義。この時間も幸せなひと時。
その時に印象的だったこと。
居酒屋に集まったのは全員ほぼ同世代(40代~50代)の男性。つまり「オッサン」である。
オッサンたちには「してはならない話」というのがいくつかある。説教だとか自慢話だとか。
それらの「してはならない話」の中でもトップクラスにしてはならないのは武勇伝である。
昔ヤンチャだった自慢とかは本当にしてはならない。きつく肝に銘じておかなくてはならないことなのだが、極めて稀なケースであるが中には例外があるなと思った。
それは加藤先生という先輩の武勇伝であった。
かつて車に乗っていた時にチンピラ数人に絡まれて因縁をつけられたという加藤先生。その際に車を降りていって彼らに対して飲み物の自販機で缶コーヒーを買っておごることで相手の戦意を削ぎ、事なきをえてその場をうやむやに収めた、という武勇伝である。
居酒屋に集まった我々はみな「それはすごい!」と加藤先生を賞賛した。
この武勇伝の何がすごいかという所なのだが。
そこに集まった我々はみな柔道という道を歩く「武道家」なのである。
武道の「武」という字は、矛を止めると書く。武道の神髄とはまさに争いや諍いを止めることにある。相手と戦って勝つことではないのだ。
争いごとや揉めごとになりそうな時に、相手に対して「ちょっとまあ落ち着いてよ、缶コーヒーおごるからさ」と言ってその場を収めた加藤先生は、武道家としてこれ以上ないほどの対応をしたということになるのだ。なのでみんなが加藤先生を賞賛した。
これが「その場で相手を投げ倒して絞めて関節キメてやっつけた」だったらダメなのである。みんな異常なまでに屈強な男たちなのでやろうと思えばそれぐらい楽勝だろうけれど、それでは武道家としては0点だ。
私は何かあるとすぐに「やんのかコラ」と言ってしまうところがまだまだあって、改めてその自分の未熟さを恥じた。
我々は格闘家ではない。武道家なのである(音楽家でもあるけど)。
我々が唯一語って良い武勇伝は「矛を止める」という意味での「武」勇伝のみである。
なので私も今後武勇伝を語る時には「こないだ酔っ払いに絡まれちゃったけどジャンピング土下座で事なきをえたぜ」とか「チンピラ数人に囲まれたんだけどスライディング土下座で難を逃れたぜ」というもの以外はありえない。
改めて「武」の道は奥が深いと思った。
そんな私が稽古をつけていただいている素敵な道場はコチラ。
ブログの横の所にもリンクを貼っておいた。是非HPを見てほしい。
今日の演奏動画。
Horace Silverの作曲した『Tippin'』をソロピアノで弾いてみました。
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