ビバップを練習することを推奨する理由
今日は珍しく本業の話。ジャズピアノの練習について。
色んな方面から見て「ビバップ」と呼ばれるジャズの1ジャンルの曲を練習するのはジャズのトレーニングとしては非常に効果が高いと思っている。
自分でもよくビバップを取り上げて練習するし、生徒に勧めることもしばしばある。
ジャズの一般的な演奏では予め決まったメロディを演奏する「テーマ部」と、そのテーマ部で用いられているコードチェンジに乗せて即興演奏をする「アドリブ部」があるが、ビバップは特にこの「テーマ部」を何度も何度も練習することに意味があると感じている。
その理由としては
・イントネーションが「ジャズ語」のそれに近くなる
・フレーズというものの成り立ちが理解出来る
というのが二つの大きな理由だ。
多くのビバップフレーズは小節の半拍前からスタートするものであり、そのスタート地点に自然なアクセントが付くようになるとイントネーションが「ジャズ語」に近づいてくる。というよりも、ジャズ語のイントネーションでないと歌いづらいようなフレーズの構成になっているので、そういった発音の矯正にもってこいなのだ。
フレーズの成り立ちを考えるのも良い。
少々専門用語が多くなるが、
「おっ、ここはディミニッシュ分解だ」とか「ディレイドリゾルブからのアルペジオか」とか「Ⅱm7に対してⅡm△7を当てるフレーズね」とか。
テーマ部のメロディはそのほぼ全てが「なぜそのメロディになっているのか」が理屈で説明がつく。
テーマ部の練習と同様に重要なのが「Charlie Parker やDizzy Gillespie やBud Powell といった生粋のビバッパーたちのアドリブ部のコピー(模倣)」でもあるのだが、このコピーをやる前にテーマ部の分析をしっかりと行っておくことでアドリブコピーの理解度も段違いになる。彼らのアドリブ部の大部分はテーマ部で使われている文法に則ったものだからだ。
もう一つ。ビバップの練習をすることによって
・器楽奏者としてのフィジカルが上がる
というものがある。
簡単に言ってしまうと、例えば我々ピアニストの場合、ビバップをあれこれしこたまやることによって動かなかった指が動くようになる、ということである。
スポーツで言えば以前より重いバーベルが持ち上がるようになるとか100m走のタイムが縮まるとかそういうことである。
だって難しいんだもん。ビバップ。そりゃあやってりゃ指も勝手に動くようになってくるよ。
ということで私はジャズピアノの学習の一つとしてビバップをやることを推奨している。
なお、練習時に何より大切なことは
・ゆっくり
・正確に
やるということだ。
速く雑にやると練習の効果は半分以下に落ちる、と私は思っている。
もちろん意味を感じられないもしくは単純にやりたくないという人はやらなくてもいい。
それは自由である。
今日の演奏動画。
Wes Montgomeryの作曲した『Monk's Shop』をソロピアノで弾いてみました。
| 固定リンク
コメント