自分の歌を歌う
私が他の音楽家に対して「この人すごい」と思う時にはいくつかのパターンがあるのだが、その中の一つに「自分の歌を歌っている」というのがある。
自分の歌を歌う人のことを私は手放しに「すごい。そして好き」と思ってしまう。
これはおそらく私自身が生きていく中で最も重要視していることをその人が体現しているからだ。
私が生きていく中で最も重要視していることは、自分の頭で誠実に思考し、自分の足で立ち、自分の言葉で自分の考えを喋るということだ。
自由というものを文字通り「自らに由る」ということだと考えているので、そういう意味では私は自由な人を愛しているのかもしれない。
自分の頭で誠実に思考し、自分の足で立ち、自分の言葉で自分の考えを喋る。
こうして言葉にしてしまうとすごく簡単なことのようにも思えるけれど、それは本当に容易ではないと日々実感しながら生きている。
すぐに借りてきた言葉を喋ってしまう。すぐに自分を大きく見せようと虚勢を張ってしまう。意識的なレベルから無意識のレベルまで、悪気はないのだけれどついついそうやって「嘘」をついてしまう。
そういうことは音楽でも頻繁に起こる。
誰かにリズムを頼ってみたり、自分を大きく見せたいが為にありもしない技術や知識をこれ見よがしに見せようとしてみたり。
そういったことの全てが悪いとは思わないけれど、私が音楽というものに願っている大きな理想とそれとは随分とかけ離れている。
情けないがこれらは全て私の話である。
翻って自分の歌を歌う音楽家のことである。
そういう人たちの真っ直ぐな歌に心を打たれる。自らの音色を持ち、自らのリズムを持ち、自らのフレーズを持つそういう人々の歌は、まぎれもなく「自由」である。
長い時間をかけて自分の歌を作り上げてきたことは想像に難くない。たくさんの他人の歌を自分の中に取り込んで、それをきちんと自分の言葉になるところまで持っていくのには膨大な時間がかかる。途中で何度も自分の不足と向き合わなければならないし、その度に心が折れそうになるのだけれど、そういう人たちはそこで再び自らの足で立って歩き始めたからこそ自分の歌を獲得したのだと思う。
明日からはそういう人たちとのライブが二つ続く。
私は私でしかない。
願わくば、虚勢を張らずに、無駄に怯えずに、私もまっすぐに自分の歌を歌いたい。
2月23日(木祝) 東京立川 Jesse James
042-525-7188
http://jessejames-tachikawa.music.coocan.jp/
vocal:高原かな piano:福島剛
19:00~start music charge:2600円
2月25 日(土)東京小岩 Back in time
03-3659-0351
http://www.bqrecords.net/backintime.htm
sax:登敬三 piano:福島剛
20:00~start music charge: 2500円
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