いつも背後に彼女がいる
流行りのアイドルなどにはとんと疎い。
昔からあまり興味が無いというのもあるし、私がどんどんとオッサン化してるせいもあって若い人たちがみんな同じように見えてしまう。実際は同じなはずが無いのに。情けない話である。
なので歌番組などでアイドルが歌っていても馬耳東風で聴き流してしまう。ほとんど頭に入ってこない。
そういうことが普通なのだが。
まれに「ん?今なんつった?」と画面を見返してしまう時がある。
ある時のこと、歌番組で若くて可愛らしい女性のグループが歌を歌っていていつものように聴き流していたら、この「ん?今なんつった?」の瞬間が訪れた。
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全然泣けなくて苦しいのは誰ですか
全然今なら泣いても良いんだよ
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彼女たちはそう歌っていた。
なんだその人間の瑕疵をあるがままに肯定する骨太な言葉は、と思った。なぜあなた方が、懸命に生きようとしながらも傷つき、それでも前を向こうとする人々を優しく包み込んでいるのだ、と。
私はすぐにピンときた。「こりゃあ背後に中島みゆきがいるな」と。
これまでにも似たようなことがあった。
TOKIOというアイドルグループが歌を歌っていて「はいはいイケメンすごいすごい」と聴き流していたら、TOKIOは
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その船を漕いでゆけ
お前の手で漕いでゆけ
お前が消えて喜ぶ者に
お前のオールを任せるな
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と歌っていて、「あんだって!?チミは!?」と志村けんのように二度見した。
ご存知の方も多いかも知れないが、これは『宙船(そらふね)』という歌で中島みゆきがTOKIOに提供した歌である。
このように私が志村けん化してしまうのは私の中に「アイドルが歌う歌なんて大体イケメンと美女の恋愛を描いたようなものばっかりで人間の苦しさとかしょっぱさなんて描かれるわけないだろ」という間違った偏見があるからなのだが、背後に中島みゆきがいるとなれば話は違う。アイドルでも容赦なく人間の苦しみやしょっぱさを歌う。だって中島みゆきだもの。
先ほどの
全然泣けなくて苦しいのは誰ですか
全然今なら泣いても良いんだよ
の歌は「ももいろクローバーZ」というアイドルグループの『泣いても良いんだよ』という歌で、案の定中島みゆきの作詞作曲だった。
作中に
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どんな幻滅もぼくたちは越えていく
でもその前にひとしきり痛むアンテナもなくはない
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という言葉があった。
こんな言葉に、ひょっとしたら一番勇気付けられているのは歌っている「ももいろクローバーZ」の当人たちだったのではないだろうかという気がしている。
アイドルが私の心にブッ刺さる歌を歌っている時には、まず間違いなく中島みゆきが背後にいる。
今日の演奏動画。
Jimmy Van Heusenの作曲した『Polka Dots And Moon Beams』をソロピアノで弾いてみました。2020年5月8日にもやっているのでリテイクです。
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