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2022年11月

2022年11月27日 (日)

ツアー終了

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11月の後半に京都を訪れる時にはそれなりの覚悟が必要だ。
この時期の京都は紅葉シーズン真っ盛りということで宿がどこもかしこもべらぼうに高い。値段は閑散期に比べるとおよそ2.5倍から3倍、普段常宿にしている安宿もこの時期ばかりはなんちゃらヒルトンホテルばりの高級ホテルに値段だけ変貌する。
色づいてんじゃねえよ紅葉マジでよ。狩るぞ。

経済的にもカースト的にもそんな高級ホテルに泊まることは許されていないので、この時期に京都を訪れる時にはインターネットを駆使して最安値のホテルを調べてそこに宿泊する。

過去の「11月後半の京都」では二畳ほどのスペースに布団が敷いてあるだけというジェイルもしくは監獄スタイルの宿に当たったこともあり、日中にその部屋にいると本当に何かしらの罪を懺悔しなくてはならないとの思いに駆られライトな感覚で罪人気分が味わえた。

安さと引き換えに人権を捨てる。その覚悟を持って最安値のホテル探しに臨まなくてはならない。冒頭で述べた覚悟とは、このことである。

今回の宿は二泊で約5000円のゲストハウス。つまり一泊約2500円である。
実はこれでも高いのだ。このゲストハウスは閑散期ならば一泊1000円で泊まれる。やはり2.5倍なのである。
宿泊の形式はドミトリーという形式で、このドミトリーという言葉に聞き覚えがある人は若い頃に貧乏旅行などをしたクチではないだろうかと思うのだが、大部屋に二段ベッドがドカスカとたくさん置いてありそのベッドの上のスペースだけが自分のスペースとなるという「大部屋形式」の宿泊形態だ。
「プライバシー」という概念自体が根幹からから失われた宿泊形態なのでその分安いのだが、今回のゲストハウスは隣のベッドとはカーテンなどで仕切られておりそれなりに人権を確保されたドミトリーだった。完全に嬉しい誤算だった。
何年か前に韓国を訪れた際に宿泊したドミトリーでは隣のベッドにいた旅行者の若い白人野郎がアジア系の女の子と私の真横でちちくりあいを始めたのでついつい彼らに向かって「ノーセックスプリーズ」と視線を合わさずに言ったという暗い過去が頭をよぎったが、今回は無事に人権が確保されていた。やはり人権は大切である。

移動手段に関してであるが、この時期には必殺の「青春18きっぷ」も「秋の乗り放題パス」も使用期間外なので使えない。となると新幹線という王族しか乗ることの出来ない車輌に乗らなくてはならないのだが、私は王族ではないので今回は行きも帰りも高速バスの昼行便を選択した。なおこの長い文章はバスの中での暇潰しとして書かれている。だって10時間かかるんだもん。

今回はこのように
・宿はゲストハウスのドミトリー
・行き帰りの交通手段は高速バス
という経費削減のみに全振りしたスタイルを選択したお陰で全ツアー行程を通して大きな赤字を出さずに何なら3000円ぐらいの黒字で終わることができたが、ぶっちゃけこれが売れてない中年ジャズミュージシャンの実態である。売れてる人は知らん。私は売れてないのでこんなもんなのである。今後も売れる予定は一切ない。

こういった旅のことを書くと「しんどそう」と言われることもたまにあるが、多少しんどい思いをしてでも一緒に演奏したい人のいるところに行きたいし、楽しみにしてくださるお客さんがいるならば何としてでもそこへたどり着きたい。そこに関しての躊躇や逡巡はほとんどない。

そしてもう一つ言うと、実は私はこういったことをあまり「しんどい」と感じてはいないのだ。
これに関しては二十歳前後の頃に二回に渡ってインド近隣の諸国を数ヶ月単位で旅行していたという自分の過去に助けられている。

ガードレールの無い崖っぷちの山道を大音量でインド映画音楽をかけながら爆走する正気の沙汰とは思えないバスや、一晩寝たら布団の中にいる変な虫に刺されて足がボコボコになるドミトリーのベッドとか。

私はそういうものを体験しているので、それに比べると今回のバスもドミトリーも安全で清潔で平和なのである。
定刻通りにバスがやってくるなんていう奇跡のようなことがここ日本では当たり前のことのようにまかり通っている。

たまに事前準備を怠ってしまったせいで移動手段が王族のみに許された新幹線になってしまうことがある。私はそんなカーストではないのに。
新幹線にたまに乗るとあまりの快適さに眩暈がする。そしてそれと同時に「あんまりこういうのに慣れたらイカン」と自分に言い聞かせる。人間は一度贅沢に慣れてしまうとなかなか下界に降りてこれなくなる。
私は贅沢がしたいのではない。音楽がしたいのだ。
やりたい音楽をやりたい人とやりたい場所でやりたい。それこそが最優先事項なのである。もちろんそういうことをしつつたくさんお金がもらえたらなお良い。毎回のギャラが10万円ほしい。しかしなかなかそうもいかない。

そこで諦めるようならば、そこまでなのである。
どうしても好き勝手に生きていたい、好きなことだけをやって暮らしていたいので、そこに伴う困難は享受しなくてはならない。
↑こうやって書きながら我が家の嫁氏は大変だなあと他人事のように思ったが、私は常々「なぜお前はきちんと働かないのか!」と嫁氏より説教をされているので大丈夫である。ホースのイヤーにマントラというやつである。

今回もやりたい音楽をやりたい人とやりたい場所でやるために京都に行ってきた。行って良かった。宿の値段を高騰させるならば今後銀杏類には色づきを禁じたいが、それでもインド経験者の私にかかれば楽勝である。

関わった全ての方々に感謝したい。

バスは今御殿場を過ぎた。
もうすぐ東京に戻る。

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