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2017年2月 6日 (月)

森山威男 meets 市川修

森山威男 meets 市川修

先日京都を訪れた時に、師市川修の奥様である市川芳枝さんから一枚のCDを手渡された。「これを聴いてくれ」と。それがこの「森山威男meets市川修」だ。

どのような意味でそれを手渡されたのか、わかっている。だからこそ、このCDをすぐには聴けなかった。きちんとした覚悟の元に聴こうと思ったから、数日が経ってしまった。で、今日、レッスンの合間の時間にコーヒーを飲みながらじっくりと聴いた。聴き終わって今、呆然としている。今日は、このCDについて、少し。

録音は今から17年前の2000年。ライブハウス「京都ブルーノート」でのライブ録音だ。
メンバーは
森山威男(ドラム)
市川修(ピアノ)
登敬三(テナーサックス)
船戸博史(ベース)


収録楽曲は
1.Mr. P.C. (John Coltrane)
2.Blue Monk (Thelonious Monk)
3.My One And Only Love (Guy Wood)
4.Hush-A-Bye (Sammy Fain)
5.Impressions (John Coltrane)
6.Good Bye (板橋文夫)

どうやら、最近になってそのライブ録音音源が発掘されたらしく、昨年2016年にこのCDは世に出たらしい。

CDプレイヤーに入れてみて、まずその収録時間に驚いた。78分である。たった6曲なのだが。どれだけ長くやってんだよと苦笑したが、その長さは必然だったのだと、聴き終わった今は思う。

一曲目の息もつかせぬファストテンポのマイナーブルース「Mr. P.C.」がこのアルバムの印象を既に決定づける。アヴァンギャルドにしてトラディショナル。全員が全員「小綺麗にまとめよう」などという意思は皆無。「行けるところまで行ってやろう」という全身全霊の演奏。まずはそのあまりの熱量に面喰った。ある程度想像はしていたのに。

セロニアス・モンクの作曲した「Blue Monk」では、ピアノ市川の溢れるブルース・フィーリングに彩られたテーマ演奏の後に、サックス登氏が天衣無縫にアドリブを展開する。14分を超える演奏がまるで長く感じない。

三曲目の「My One And Only Love」は市川のお気に入りのジャズバラードだ。一歩間違えれば陳腐なロマンチシズムに堕してしまうこの曲も、この四人にかかるととびきり熱くもどこまでも美しい演奏になる。市川がピアノのアドリブソロの最後に「星に願いを」の一節を可愛らしく引用する。「そうそう、こういう所、あるんだよ」とにやっとする。師は「サービス精神が服を着て歩いている」ような人で、豪放磊落に見えてとてもチャーミングで繊細で優しかった。その人間性を思い出した。

四曲目の「Hush-A-Bye」から最後六曲目、ジャズピアニスト板橋文夫氏の作品「Good Bye」までは、もう何をするのもやめて、ただただ呆然と聴いていた。それまでは少し携帯電話をいじったりしながら聴いていたのだが、そういったことがアホくさく思えた。ただひたすらにこの音の洪水の中に身を委ねたい、と、そう思った。

命を削るような懸命な熱い演奏。後方からガトリングガンで一斉射撃を打ち鳴らすかのような森山氏のドラム。時には巨大な樹木のように重厚に、時にはウッドベースの弦を引きちぎらんばかりにかき鳴らす船戸氏のベース。その中をどこまでも自由に泳ぐ登氏のサックスと市川のピアノ。

もう、師が亡くなってから11年である。私も無駄に師を神格化したりはせずに、冷静に演奏を聴けるつもりでいた。けれど、なぜなのだろう。やはり聴いていると涙が溢れてくる。どこまでもジャズを愛した男たちが、「今しかない」という決意のもとに奏でる音。それは、強く私の心を揺さぶる。

そうだ。こういう演奏を二十歳ぐらいの頃に見て、「なんてカッコいいんだ!ジャズって最高だ!」と思ったのが私の音楽の原点だ。それは今聴いても決して色褪せなかった。むしろ感動はその頃よりも大きくなっていた。

しかしなあ、最後の「Good Bye」は反則だよなあ。あれを聴いたら涙腺崩壊だよなあ。散々心を揺さぶられたあとに、最後の最後サビから入ってくる登氏のサックスの音に追い打ちでやられる。その時の森山氏のドラムがまたすごい。比喩でなく、「音楽に命をかける」ということがどういう事なのだかわかる。

演奏が全て終わった後に、聴きなれた懐かしい声で市川修が「森山威男さん。どうもありがとうございましたー」と客に挨拶をする。

音楽の師としてはもちろんのこと、本当に素晴らしい「人間」に出会うことが出来た。

市川修先生。ありがとう。

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