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2015年10月 6日 (火)

短期集中連載「Abdullah Ibrahimの魅力に迫る~第三回:Abdullah Ibrahimのルーツを辿る」

短期集中連載「Abdullah Ibrahimの魅力に迫る」、第三回目は「Abdullah Ibrahimのルーツを辿る」。

Abdullahのルーツはもちろんアフリカにある。それは間違いない。
なので「Abdullah Ibrahimのルーツを辿る」と題した時には私がアフリカの大地を旅して、彼を生み、育んだその悠久の地をつぶさに紹介するのが理にかなっているのだが、何分私はアフリカを旅した事がない上に、今からアフリカを旅すると、肝心の今週末のAbdullahの上賀茂神社でのコンサートに行けなくなってしまうので、それは本末転倒だ。
「アフリカを紹介せずに何がAbdullahのルーツか!」というお叱りの声には「あーあーあー聞こえない」とアホの子のフリをしつつやり過ごして、やはり昨日と同じくレコードを紹介しようと思う。

Abdullahが、自らにその影響を認めている音楽家を紹介したいのだが、紹介する作品自体は単なる私のお気に入りであるのでAbdullahから言わせれば「いや、もっと良い作品がある」という事になるのかも知れないが、そこも気にしない。 色々気にし過ぎていたら何も書けないんだって。

【This One's for Blanton : Duke Ellington & Ray Brown 1973年】

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まずはこれから。ピアニストにして作曲家、そしてバンドリーダーとしても有名なDuke Ellingtonの作品。実はAbdullahを世間に紹介したのはこのEllingtonだという経緯もある。『Duke Ellington presents The Dollar Brand Trio』という作品が1964年に発表されたが、それである。

Duke Ellingtonがかなり個性的でアヴァンギャルドなピアニストであるという事を知らないジャズファンが意外なほど多いのに驚く。が、それはあまりにも彼のビッグバンド、Duke Ellington Orchestraが著名すぎるからかも知れない。ビッグバンドを率いた彼のコンダクターやコンポーザーとしての手腕はもちろんとんでもなく素晴らしいが、やはり私は「ピアニスト・Duke Ellington」がたまらなく好きだ。

ベースの名手、Ray Brownとのデュエットアルバムである本作は、そのピアニスト・Ellingtonの魅力が存分に詰まった一枚である。

【Thelonious Himself : Thelonious Monk  1957年】

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続いてはこれ。Thelonious Monkのソロピアノ・アルバム。実は私が本格的にジャズに興味を持ち始めたきっかけとなった一枚でもある。

Abdullahがどのピアニストからの影響が最も色濃いのかという事を考えた時に、本人はどう言うのかはわからないが、やはり一番はMonkではないだろうか、というのが私の見解だ。

Abdullahの素晴らしさの一つに、残響音の美しさと、間の取り方の巧みさ、また独自さが挙げられる。

かつて私の受講したミュージックワークショップの際に、その中心であった名ギタリスト廣木光一氏が「休符を休みと捉えるのは音楽的な犯罪である。休符と音符は等価値である」と仰ったのを聞いて、なるほどなるほどと目から鱗が落ちたが、Monkの休符は、音符と同じかあるいは時によってはそれ以上に我々聴き手をぐいぐいと音楽世界に引き込んでゆく。

言うまでもなく、超個性的なMonkの音楽世界であるが、Abdullahがその音楽をスタイルとしてだけではなく本質的な部分から理解し、敬意をもって演奏した名演に1982年のアルバム『African Dawn』における「'Round About Midnight(Thelonious Monk作曲)」がある。この演奏は、決してMonkの模倣にとどまらない、まさにAbdullahならではのモンクスミュージックの解釈という事で私はとても好きだ。

【Handful of Keys : “Fats” Waller and His Rhythm 発表年不祥】

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最後に紹介したいのはこのアルバム。Abdullahにも強い影響を与えた20世紀前半に活躍した名ピアニスト、“Fats” Wallerのアルバムである。

Wallerと同時期に活躍した超絶技巧のピアニストでArt Tatumというピアニストがいる。どちらもストライド奏法を巧みに操る名手であるが、個人的な好みとしては断然こちらのWallerである。

Abdullahがしばしば自らのルーツにブルースという音楽の影響がある事を言うが、このWallerの音楽にもたっぷりとブルースが詰まっている。

悲哀に似た感情を冗談にして笑ってしまおうというのがブルースの根っこであるとするならば、Wallerの音楽にはそういった冗談性や、またそれだけにとどまらない優しさまでもが含まれている。それはもちろんAbdullahもそうだ。

という事で第三回目の「Abdullah Ibrahimの魅力に迫る」は、彼にゆかりのある三人のピアニストを紹介してみました。

やばい!一生懸命書いてたらこんな時間だ!仕事に遅れる!

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