センス無し男くん
先日とあるピアノの生徒から「自分にはセンスが無いかも知れないけど頑張るので見捨てないでほしい」というような内容のメールが来ていて、「何を隠そう私自身も未だに自分にセンスや才能があるのかどうかなんてわからないのだ、多分8:2ぐらいの割合で無い可能性が高いけれど、大丈夫なのだ」とバカボンのパパよろしく返信をカマした。
センスや才能。
そんな事を考えた事が無いと言えば嘘になるけれど、今はあまり考えない。考えた所であまり物事が好転しないからだ。
そういう事について私の考えを少し。
20代の頃に考えていた事の一つにこんな事がある。
才能の有る無し、向き不向き、そういう事が早い段階でわかって早々に諦めをつけて自分に向いた世界に行く事が出来たら人生はどんなに楽か。多分本当の意味での才能の有る無しや向き不向きはその世界に相当どっぷり浸かって行く所まで行かないとわからないのではないか、と。
当時私はぼんやりと「あれ、オレってひょっとしてこのまま音楽の世界でずるずる生活していくっぽいな」とは思っており、そこでほんの少しだけの不安として「でも才能無かったらどうすんべ」とは思っていた。思っていたが、目の前の困難からは積極的に目を逸らすようにする図々しさも兼ね備えて持っていたので、「まあそんときゃそん時」と一瞬でその不安を忘れ去る事に成功した。バカで良かった。良かったのか悪かったのかは今はまだわからないけど。
で、「才能があろうと無かろうと、多分努力さえすればプロになってその道で食っていく事ぐらいは出来る」とも思っていて、それは実際には当たった。ただし努力が実を結んだのではなくて、単純に運が良かっただけだ。
デューク東郷ことゴルゴ13もこんな事を言っている。
「10%の才能と、20%の努力、30%の臆病さと、残る40%は、運だろうな…」と。
余談だがだいぶ昔にゴルゴ13のパチスロがあり、レバーを叩いてからボタンを押してリールを止めようとすると、台がうんともすんとも言わない。あれ、故障したかな?と思った刹那、台が急に喋り出す。上記のセリフを言う。大当たり確定の演出だった。この演出が見たい(聞きたい)が為だけに随分とパチスロの「ゴルゴ13」には金を投資したものだ。
10%の才能と…ギャー!大当たり確定!
脳からオツユがちゅるちゅると出る瞬間である。
閑話休題。
私に関して言うと、1%の努力と99%の運のみでここまで来ているので、ゴルゴ13よりも随分と逆イバラの道を歩いてきている。だからゴルゴ13のように某国の大統領を狙撃した事も、パツキン美女と腰の砕けんばかりのファックをした事もない。なのでたまに「どうやったらプロの音楽家になれますか」と質問される事があるが、それに対しては「努力していて運が良ければなれる」と答える事にしている。質問に対する回答としては実に身も蓋もない。
ろくに譜面も読めないどころかろくにピアノも弾けない状態で、「出来ます」と図々しく嘘をついて、それで「じゃあお前今度のピアノ頼むわ」と言われた時に「ガッテン承知之介!!」と景気よく答えた所までは良いものの「やべえ!出来ないのがバレる!急いで期日までに何とかして嘘をホントにしていかねえと!」とごまかしまくりながらやってきたという、そんなインチキまみれのプロ生活も間もなく10年を迎える。ホント、我ながらよくやってるな、良心の呵責とかそういうのねえのかよ、とツッコミたくなるが、そういった意味での良心の呵責はビタイチ無い。だって嘘がバレてビークー、いわゆる「クビ」になった事も一度や二度じゃねーもーん。
あ、今は譜面読めますからね。難しいのはすぐには無理だけど。
10年近く音楽で生計を立てていながら、自分に音楽の才能やセンスが有るかどうかなんてわからない。多分、無いような気もする。
けれどそれでももう後には引けなくなってしまった。
10年のプロ生活の中でわかった事は、自分の才能の有無ではなくて、もうどうしようもないくらいに音楽が楽しい、オレは好きなんだ、という事。
なので20代の頃に私に「やめとけ、才能の無い人間が音楽の世界なんて行っても苦労するだけだから」とアドバイスを下さった方々がたくさんいて、そのアドバイスに対して私は「へへっ!そうっすね!サーセン!マジで!」と適当に答えていたが心の中では「うっせー死ね」と思っていて、実際に様々な場面で苦労はしているのでその先輩方のアドバイスはあながちウソではなかったという事にはなるのだが、でももう引けないんですよ、すんません、としか言いようがない。
繰り返して言うが、自分に才能が有るか無いかなんてわからない。多分無い。しかし、無い者には無い者なりの戦い方がある。知恵を絞って努力をして、その過程が結構楽しいんですよ、マジに。
さて、という事で一時間もだらだらとブログを書いてしまったので練習に戻ります。
皆さん、今日は台風が来るらしいので外出は控えるようにね!
私はそういう外出しているアホな奴がいないかどうか、嵐で氾濫している江戸川を見に行っているバカはいないかどうかをパトロールする重要な任務が夜に待っています。
チューハイ片手に。
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