花見という潔くない言葉
また昨日ブログの更新を忘れてしまった。今回は完全に忘れていた。
家に帰ってからやろうかななどとも思っていたのだけれど、帰りの電車でヤク中のようにやかましい外人集団にケンカを売られて、その場は何もなかったのだけれど、家に帰ってからも「何だあのクソ外人どもは!」とぷんすか怒っていたらブログの事はすっかり忘れていた。
ま、何もなくて良かったとしよう。
先日、確定申告をしに行った事を書いたが、その道中で見かけた光景について少し。
自転車で平井にある江戸川北税務署に行ったのだが、その途中で新小岩にある大きな公園を横切った。この公園は桜の名所でも知られていて、花見の時期にはかなりの人出で賑わう。
まだ桜は咲いていないので、花見客などいるはずもないのだが、いた。
正確には花見客だったのかどうかはわからない。
多分家や住所を持っていないのではないだろうかと推測される風体の方々が3人だか4人だか集まって地べたに座って昼からカップ酒などを呑んでおられた。
この光景を見て私は即座に「これは正しいのではないだろうか」という思いに駆られた。
「花見をしたい」という文言をもっと自らの心に正直に、そしてストレートに言い直すならば「屋外で酒が呑みたい」という事であり、「何で?」と問われた時のエクスキューズとして「だ、だって、桜咲いてるし…」となる訳である。
となれば、極論で言えば桜は咲いていなくて構わない、という話になる。つい先日、ドラムの南たけし氏と同じくドラムの町田浩明氏と夕方から激しく酒を痛飲していた時に
「花見したいねえ」
「したいですねえ」
なんて会話になったのだが、どこが良いかなあと話している時に
「皇居の周りの千鳥ヶ淵なんて綺麗ですよね」と言ったのだが、「でもあそこは立ち止まっちゃいけないし、酒呑んじゃいけないからなあ」となって、「じゃあ千鳥ヶ淵はナシだな」という話になったのだが、ここにおける構図としては明らかに、そして圧倒的に「花の美しさ<飲酒の可否」であり、そこの部分を突き詰めて考えていくと、じゃあ酒が呑めるのであれば花は咲いていなくても良いのではないか、という事になる。
余談だが私は千鳥ヶ淵と言えば反射的にさだまさし先生の『風に立つライオン』の一節
「ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更
千鳥ヶ淵で昔君と見た夜桜が恋しくて
故郷ではなく東京の桜が恋しいという事が
自分でも可笑しいくらいです
可笑しいくらいです」
という歌詞を思い出す。
ケニアに向かった国境を越える医師団の青年の話。これが泣けるんだよ。
おめでとう。
さよなら。
閑話休題。
そう考えた時に、新小岩の公園で桜がまだ花を身に纏っていない裸の樹を見ながらコップ酒を呑んでいたアウトドアな感じの方々はどこまでも「正しい」。むしろ「いや、だって花が咲いているし」というエクスキューズを用意していない分、潔いと言っても良い。
また私はこの光景を見ながら宮沢賢治の詩の中で好きなこんなものを思い出した。
三七八
住居
一九二五、九、一〇、
青い泉と
たくさんの廃屋をもつ
その南の三日月形の村では
教師あがりの採種者(たねや)など
置いてやりたくないといふ
……風のあかりと
草の実の雨……
ひるもはだしで酒を呑み
眼をうるませたとしよりたち
賢治の詩にはなかなかにシビれるものが多いが、この絶望的な描写もなかなかにぐっとくるものがある。まさか新小岩で賢治の世界を体感する事になるとは。賢治の詩で他に好きなのは『眼にて云ふ』というものがあるが、それは今回は紹介せずにおく。気になる人はヤフーでググってほしい。もしくは詩集を購入してほしい。
ヤバイ、書きながら宮沢賢治の詩集だけを片手に岩手を一人で旅行した19歳ぐらいの時の黒記憶が蘇ってきた。マインドアサシンかずい、オレの記憶を抹殺して!イタイよ!イタ過ぎるよ!
という事で私はこの春にどこかで花見をしようと思っていたのだが、花見という呼称が非常に言い訳がましい不誠実な言葉に思えて来たので、「花見をする」ではなく「屋外飲酒をする」という言葉に変えようと思う。
花は樹に咲くんじゃないんだよ。我々の頭の中に咲くのだよ。「どんな鳥も想像力よりも高く飛べる鳥はいない」(寺山修司)のだよ。
すみません、頭がわいております。
本日3月15日は池袋のスタジオ「NOAH」で、スタジオセッションをやっております。
私はベースを弾くつもりですが、ピアニストに鶴野美香さんがいらっしゃって下さるそうです。17:30から19:30まで。参加費は1000円です。
楽しんでまいります。
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