差別の仕組み
昨今のイスラム教徒過激派のテロの報道を見るにつけ、「お前らがそうやって凶悪な事をやるからイスラム教徒全体が凶悪な印象で見られちゃうじゃんか!」といつも思う。
私がパキスタンなどに滞在していた時に知り合ったイスラム教徒たちはほとんどの方々が平和的で真面目で親切で、私はイスラム教徒全体という事で言えばまるっきり悪い印象を抱いていない。
同様に在日外国人、特に在日韓国(朝鮮)人などの中のごく一部のアホどもがクソのような犯罪を犯した事がニュースで報じられているのを見ると「お前らのようなアホ共のお陰で他の在日の方々がまた差別の目に晒されちゃうじゃねえか!」と思う。イスラム教徒の例と同じように、ほとんどの在日韓国人の方々は気持ちの良い方々であり、そのようなクソな人間などごくごく一部だ。
大半はまともでアホは一部、という構図。これはイスラム教徒だけでなくキリスト教徒や仏教徒も同じで、もちろん韓国人も朝鮮人もインド人も中国人も日本人もみな同様に「大半はまとも、アホは一部」なのである。
先日、ゲイの知人と呑んでいる時にも彼が、一部のゲイが迷惑をかけるような事をするとゲイ全体が「そういう連中」として見られるのが非常に迷惑、と言っていた。ゲイの世界でも上記の法則は当て嵌まる。ちなみにその知人はきわめてまともだ。良識的で知的だ。見た目はオッサンだがハートは普通の女子よりも遥かに女子なので大変キュートである。
大半はまともでアホは一部というこの事実。冷静に考えれば当たり前過ぎるこの真実であるが、我々はなかなかその真実に基づいて判断出来ない事が多い。
原因ははっきりしている。
全体を把握するに足るだけの数のサンプルデータを得る事が困難だからだ。
データを得て傾向を計るという作業は、ある程度の試行回数を重ねなければ平均値に収束しない。少ない試行回数では確率が「暴れる」事も少なくない。
例えば10個のボールが入った福引き箱があるとしよう。ボールは赤と白のボールが5個ずつ。ここにテキトーに手を突っ込んで赤いボールを引いてくる確率は単純に二分の一である。引いたボールを箱の中に戻して、という作業を繰り返すと常に二分の一の完全確率となる。しかしこの作業、試行回数が四回ほどだった場合に、四回連続で赤いボールが出る事はザラにある。確率としては16分の1だ。充分にありうる。データが本来の二分の一に収束する為には、少なくとも100回ほどの試行回数が必要になる。
そしてその時に問題は、四回連続で赤いボールを引いた人間は「この中には赤いボールしか入っていないのではないか」と思う事である。
ここに「差別」の根本的な仕組みがある。
例えばイスラム教徒であれば全世界に数十億人もの信徒がいるのであるが、その全ての人と知り合い人間同士の触れ合いをするのは不可能である。という事はニュースなどで知る彼らの姿から判断するより、つまりは極めて少ない試行回数のデータから判断せざるをえなくなる。すると先程四回連続で赤いボールを引いた人間が「この箱の中には赤いボールしか入っていない」と感じたように、「イスラム教徒は凶悪な連中だ」という判断になる事はありうる。
人間がある程度思い込みによって判断を下してしまう特徴がある以上、重要なのはそのデータと出会う順序なのではと思う。
悪い事例に序盤で連続して遭遇してしまえばどうしても悪い印象になる。
対応策は、更に試行回数を増やしていく事、つまり上記の例で言えばニュースで見るイスラム過激派だけでなく市井のありふれたイスラム教徒と多く触れ合うというのが最善であり、そうする事によって「まあ悪いヤツラなんてごく一部で大半はそりゃあまともだわな」という所に収束する。それが叶わないのであれば、想像するしかない。「ありふれた普通の連中」の事を。
私も昨日そのような差別のロジックに陥ってしまった。
みずほ銀行の元役員が巨額の詐欺事件を犯していたというニュースを聞いて、「やっぱみずほはダメだな!」と思ってしまった。実は個人的に以前みずほ銀行の行員に非常に不愉快な思いをさせられた事があり、それ以来私は別の銀行に乗り換えた事があるのだ。
しかし、悪いのは詐欺事件を犯した元役員であり、私に昔、横柄かつ非論理的な対応をした行員であり、みずほ銀行で働く大半の方々は善良で誠実である事は想像に難くない。
そうした人間の存在を無視して「みずほ銀行はやっぱりダメだ」とバッサリいくのはいかがなものかと思うのである。
人間は簡単に差別の仕組みに嵌まってしまう。
本当に気をつけなければならない。
さて、自分でも書いていて途中から意味がわからなくなるような事を書いてしまった所で最後は宣伝。
本日25日は小岩「オルフェウス」でジャムセッション。ギター稲葉敬、ベース鴻野暁司、ドラム南たけし、キーボードがワタクシ。
19:00スタートです。
皆様のご参加を心よりお待ちしています。
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