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2013年1月 7日 (月)

舞台で死ぬ

職業に貴賎などないというのは昔から思っているが、但しどうしても憧れの目で見てしまう職業というのが幾つかあって、その内の一つは将棋棋士であり、もう一つはプロ野球選手であり、更にもう一つは漁師である。

取り分け漁師という職業への憧憬の念は極めて強い。「自分内で最もカッコイイと思う職業」は、多分漁師である。

彼等にとって、獲物はイコールで金である。獲物を狙う、つまりは金を掴むのだというわかりやすい意欲によって獣のように研ぎ澄まされた視線を見るにつけ、綺麗事ではない「生きる」という姿を見る。

そう、言い方は「モロ」になってしまうが、我々は働く事で金を得て生活をしている。そして他の命を殺し、喰らう事で生きている。その当たり前の事に貪欲になる漁師。いつもシビれてしまう。

昨日、夜にマグロ漁師達の特集番組がテレビでやっており、食い入るように見た。私はテレビ番組の中ではこの「漁師ドキュメンタリー」と「警察密着24時」が死ぬほど好きなのだ。

一人、完全に頭の「おイキになられた」老漁師を見た。

心臓に疾患を抱えながら漁に出る漁師の話である。

細かい事情はよくわからないが、その心臓の疾患のせいで定期的に水を飲まないと血液が凝固してしまうという病気であるらしかった。なので、その老漁師は漁の合間にがぶがぶと水を飲む。「おい、そこまでして海に出るかこのジイちゃん…」と私が狼狽したのは言うまでもない。

その老漁師が、昨年末に亡くなったそうだ。その最期に驚いた。

何と漁をしながら、しかもマグロを仕留めながら、海の、船の上で逝ったというのだ。

「本当に海が好きな男でした」とその老漁師の妻が言う。

何と凄まじい生き方だろうと息を呑んだ。

私は舞台の上で死ねる程に音楽を愛せるのだろうかと思った。

「マグロが獲れたぞ!」と屈託無く満面の笑顔を浮かべる老漁師。

それが何より印象的だった。

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