確変中のパチンコ台を捨てるように
先日中学時代の友人達と呑んだ。よく会う連中なので、それ自体は珍しい事ではない。
ヤマとウチダという、昔からの友達だ。
我々三人の共通の趣味で魚釣りがあって、先日の酒の席ではその魚釣りに関してなかなか面白い計画が持ち上がった。
釣り船には大きく分けて乗り合い船と仕立て船、という二種類がある。
乗り合い船というのはまさに読んで字の如く、様々な人間で乗り合わせていくものだ。釣り物も決まっている。例えばアジの乗り合い船だったら、船中に乗り合わせた何人かで、ひたすらにアジを狙って釣るというもの。料金は平均して8000円〜10000円ほどかかる。
それに対して仕立て船というのは分かりやすく言えば貸し切りだ。仲間内で料金をシェアして船を貸し切り、その時の気分で「船長、アジが釣りたいっす」と言ってアジを釣り、大分アジを釣ったなと思ったら「船長、アジは大分釣ったんで今度はシロギスが釣りたいっす」などと勝手な事を言って良いのだ。究極を言えば、「飽きたんでもう帰りたいっす」もOKだ。
この仕立て船、ウチダが調べた所によると、料金が三人で25000円前後というのが相場らしい。
船の貸し切りなどと言うと完全にスーパーセレブな感じがするが、実際の所は一人8000円強。乗り合い船と殆ど変わらないのである。
我々はこの仕立て船に乗りたい、と目論んでいる。
好き勝手に出来る仕立て船。この仕立て船でやってみたい事があるのだ。
まずは何はともあれイカを釣りに行く。三人で何とか工夫して、どうにかイカを一匹釣る。ここまでがひとまずの目標であるが、これは何とかなるのではないだろうかと思っている。というよりも、これが達成されない事には我々の目的は成就されないからだ。
誰かがイカを一匹釣ったとしよう。そうしたら、どれだけ群れの好反応が魚群探知器を激しくノッキンオンヘブンズドアしていたとしても、我々は一度そこで釣りをやめる。
船長が「おい!今釣らなきゃいつ釣るんだよ!」などと怒っても知らない。とにかく我々は一度そこで釣りをやめる。例えて言うならば確変中のパチンコ台を「やーんぴ!」とやめるようなものだ。ある程度怒られるのは覚悟の上だ。
そこからは三人の分担作業になる。
一人はまず、釣りたての生きたイカを捌きにかかる。まだ元気一杯に生きているイカを、である。これは恐らくヤマの仕事であろうと思われる。ヤマの職業は料理人であるからだ。
残った二人、おそらく私とウチダの二人であると思うが、この二人の内片方は、前日に買ってきて用意してある生の山葵をすりおろし、もう片方は生姜をすりおろす。つまり薬味の準備である。
そう、我々の目的は「生きたイカをその場で捌き、その場で食す」である。
「死んだイカを家に帰ってから何杯も食べる」のではなく、「つい先程(一、二分前)まで海を泳ぎ回っていたイカをその場で食す」なのである。その為に一人一万円弱の金を支払う。なかなかに楽しい遊びにである。
その後はついでだ。
もちろん魚釣りはするだろうが、釣れても釣れなくてもどちらでも良い。
一匹25000円のイカである。
涎が垂れそうだ。
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