幻の烏賊
最近は結婚パーティーだの作曲だの飲酒だのと色々な事を頑張っていたので、かみさんがご褒美に私を魚釣りに連れて行ってくれました。
数日前からずっと我が家に泊まり込んで「寝tai!呑みtai!働きtakunai!」でお馴染みの「だらだら隊」のエースを務めているタナカツネキくん(30歳北海道在住)は、奇跡的な事に自動車運転免許を持っているので(私も奈美子も持っていない)、レンタカーを借りてツネキくんと奈美子と私の三人で千葉県の館山という所まで行って参りました。
目的を、恥ずかしながら申し上げますと、我々は「伝説の烏賊」というものを求めておりました。
私の村に古くから伝わる言い伝えがございます。年老いた老婆が、「その者、青き衣を纏いて、金色の野に降り立つべし…」という枕から私たちに語りました。「アオリイカ、と呼ばれる烏賊がおるのじゃ。その烏賊を手にした者には、天上への道が約束されるのじゃ。天上へ行きたくば、アオリイカを探すが良い…」と。
そんな事を言われれば、私たちもそりゃあ「アオリイカ」なる烏賊を求めます。
「アオリイカは本当にいたんだ!父さんは嘘つきじゃなかったんだ!」
当然、そうシャウトする自分の姿を夢想します。40秒で、支度もします。
私たちは、「見ろ、人がゴミのようだ!」という言葉を連呼しながら家を出ました。そして館山の漁港に着きました。
私たちは、漁港に着くや否や光りよりも速く、アオリイカを釣る為の餌木(エギ:ルアー)を投げました。
ananとnon-noに書いてあった「アオリイカが選ぶ今年抱き付きたいエギNo.1」を投げました。
投げました。投げました。乗客に日本人はいませんでした。いませんでした。いませんでした。
けれども、投げども投げどもアオリイカはエギに抱き着いてはくれません。
山は死にますか、海は死にますか、川は死にますか。そんな言葉が我々の脳裏をよぎります。
逝ってしまうのですか。
傍らで、嫁の奈美子が謂いました。
「ここが漁港ですって?いいえ、ここはお墓よ。あなたと私の。」
そうです、そこはお墓だったのです。私達の。
私は、ある瞬間、エギが根掛かりを起こして海の藻屑となった瞬間に、心が折れる音を聞きました。ええ、「ぽきり」と。
結局の所、アオリイカという烏賊は、やはり「伝説の烏賊」のままでした。実際には存在しない烏賊だったのです。
悔しいので、本日は帰りに烏賊を買いました。魚屋で。
幻の烏賊ことアオリイカが、あっさり売ってやがりました。
300円で。
今から七輪で焼いて食べます。
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コメント
えっ!?アオリイカってそんな値段で売ってるか??
投稿: okada | 2010年11月 2日 (火) 20時50分
カーさんが夜なべして仕掛けをつくっていた~♪のグレコです。
釣りの諺に
「釣り竿は一方に釣り針を、もう一方の端に馬鹿者をつけた棒である。」というのがあるらしい。この馬鹿者のランキングでは良きライバルを見つけたとほくそ笑んでますが、いかがでしょ。
投稿: 上州屋のマワシモノ | 2010年11月 4日 (木) 10時00分
okadaさんへ
売ってるよ。ちっちゃいやつね。やっぱりきちんとしたアオリは2000円くらいするけどね。でも美味かったよ、安物のアオリも。
投稿: ふくしまたけし | 2010年11月 9日 (火) 10時33分
上州屋のマワシモノさんへ
その釣竿のくだりは良いですねえ。どちら側にも魚がぶら下がってないのもまた良いですねえ(笑)先日は小岩までありがとうございました。
投稿: ふくしまたけし | 2010年11月 9日 (火) 10時35分