小学校から大学まではずっと柔道部に所属していた。
朝起きたら走って筋トレ。授業が終わったら部活で柔道。それが終わったら、夕飯を食べてから町の道場に行って、また稽古。
朝も稽古、昼も稽古、夜は愛する妻・景子(つま・けいこ)です。
おっと、これは角界の革命児こと貴乃花親方のモノマネをする松村邦広だった。そもそも私の妻は「奈美子」だった。景子では、ない。
そんな毎日だったから、私にとって「部活動の思い出」と言えば、柔道部での思い出しかない。青畳の上で、白い柔道着を着たガチムチな連中と「おらぁぁっ!」、「でやぁぁっ!」などと言い合っていた記憶が殆どだ。
あだち充的な記憶は、無い。甲子園の公衆電話から電話をかけて、「上杉達也は、浅倉南を…脳内で何遍もエラい事にしてしまっています」みたいな記憶はまるでない。念のために注意しておくが、名作「タッチ」の中にも上記のようなシーンは登場しない。「タッチ」という漫画は、口に葉っぱをくわえた悪球打ちの男や、語尾に必ず「ズラ」を付けるピアノの上手い男達が甲子園を目指す爽やか野球漫画である。誤解しないでいただきたい。
さて、先日かみさんと夜中に「もし高校生に戻れるならば、何の部活がしたい?」という話になった。
私の答えは、「今現在の技術と知識を持った状態で軽音楽部」である。なぜならヒーローになれるからだ。
それを聞いたかみさんの反応は、「ちっさ!お前、人としての器(うつわ)、ちっさ!極小!お猪口の裏ぐらい!ちっさ!」であった。
なるほど奈美子、お前が私に罵倒の言葉を浴びせるのもわからなくはない。
私とて現在は音楽を生業にする者の端くれ。私が現在の技術と知識を持って高校の軽音楽部に殴り込むのは、例えば広島カープの二軍の控えのピッチャー(とりあえずはプロ)が高校の野球部に行って、「ほーらお前らー、オレのフォーク打てねーだろー、ばーかばーか」とやるのと一緒なのだ。恐らくは中にはかなり上手い奴なんかがいて(後に「ゴジラ」のニックネームでニューヨークヤンキースの四番を打つ男であった)、渾身のフォークを簡単にスタンドに運ばれ、私は「あ、あれ…?今日は調子が悪いな…ま、まあ、今日はこの辺にしといてやろうかな…が、頑張るんだよ!高校球児諸君!」などと言いながらすごすごと尻尾を巻いて退散するのだろうが…
いや、そんなネガティブな所まで想像しなくて良い。要は「現在得意にしている事」をそこに持ち込むのがセコい、人としての器が激小、という事なのだ。
ならば、と私は考える。何が良いだろうか。
…
…
…
そうだ!文化系だ!
私はずっと「体育会系」で若い時分を過ごしてしまった為に、文化系に対して何とも言えない憧れを抱いていたのだ。
まず「女子がいっぱいいる部活」、そんなのに縁がなかった。故に女子に対しては、「う、うるせーな…ブス!」みたいなシャイなあんちくしょうの対応しか出来ていなかった。
もっと気さくに、もっとフレンドリーに女子と接する事が出来ていれば、私の性格はこんなに歪まなかったのに!
そこで考えたのは、「文芸部」、或いは「演劇部」である。
そんな部活の帰り道、「ねー何々さーん、ここの近所にレモンハイが200円の激安立ち呑み屋があるんだけど寄ってかなーい?もつ煮も300円、激ウマだよ?」などと爽やかに誘う。
完璧だ…完璧なプレイボーイだ…DT(童貞)かYT(ヤリチン)かで言えば、完全なYTだ…
そんな事がしたかった。そんな高校生活が送ってみたかった。
何が腕立て300回3セットだ!スクワット500回だ!そうやってガチガチに童貞をこじらせたんじゃないか!
しかし、そこに追い撃ちをかける妻・奈美子の一言。
「アンタ…文芸部も演劇部もオタクの巣窟だよ…?」
良いんだよ!バカ!文化祭で「ゴドーを待ちながら」とかやりてえんだよ!オレが演出と脚本をやりてえんだよ!で、キャッキャ言いてえんだよ!
そんな事を言っていた奈美子が高校で入りたい部活は「写真部」。お前、そこもオタクの巣窟だろ…
てな訳で明日はライブです。
上野アリエスで19:30から。明日はハーモニカ皆川和義とのデュオです。ちょっと実験的な試みですが、二人でやってみます。見に来ると世界が平和になる(多分)から、来ると良いよ。
さよなら。
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