人生と麻雀
先日、東京に住む大学時代の先輩と我が街小岩で呑む機会に恵まれた。
昔から随分と世話になっている先輩で、私が今東京で暮らしている中での人間関係を形成出来ている一つの要因を作ってくれた人でもある。わかりやすく言ってしまえば、彼から紹介された幾人かの音楽家、また音楽関係者との関わりが、私の現在の生活に強い影響を及ぼしている。尊敬するギタリスト、廣木光一氏も最初は彼からの紹介だった。
そんな大恩ある先輩との酒の席にも関わらず、私はいつものようにごぶごぶと安酒を鯨飲、あっという間に妖怪「よれよれ泥酔ばあ」へとなった訳だが。
同席したかみさんの話によれば、帰途に着く先輩を小岩駅に送る際に、駅のホームへ上がるエスカレーターに私は自転車に乗りながら上機嫌で乗り込み、ホームへ着くや否や自転車ごと激しく横転。「大丈夫っ!酔ってないってっ!」という酔っ払いのみに許された言葉を発する私を見て、先輩は私のかみさんに「何か、大変やなあ」と笑っていたとの事だ。
確かにかみさんは大変だとは思うが。
そんな先輩との会話の中で印象に残った言葉があった。
「麻雀って面白いっすよねえ。また今度一緒に麻雀しましょうよ」
「ああ、麻雀面白いよねえ。またやろうや」
そんな会話の中で出て来た言葉だった。
どうやらその先輩の父上が発した至言らしいのだが、曰く、
「麻雀は人生と同じくらい面白い、というのは間違いだ。人生は麻雀と同じくらい面白い」
という事だ。
見事である。まさしくその通りだと私も思う。
先輩が言った。「もし俺が企業の面接官になったら、受験者に麻雀をさせて、それを後ろからしばらく見ていたい。そうすれば下手に建前的な面接をするよりもよっぽどそいつの事がわかる」と。
麻雀というのは面白いもので、打ち手がピンチに瀕した時にどういう行動に出るか、それにはその人の性格が如実に出る。もっと大袈裟に言えば、その人の人生哲学みたいなものが出る。
大きく分けてしまえば、
・危険を顧みずに突き進んで勝負する
・一度後退して体勢を立て直す
・後退はしないまでも、大きな勝負には出ずにその位置で様子を見る
この三つである。
もちろん、これらは常に同じ選択肢を選んでいたのでは仕方がない。その場その場の状況に応じて、「今は行く時なのか退く時なのか」を見極める判断力も必要となる。勝負時に日和ってしまうようでは話にならないし、かといっていつでも何処でも猪突猛進では、あっさりと犬死にしてしまうのがオチだ。
またそれらの「行き方」、或いは「退き方」や「立ち止まり方」にも極めてその打ち手の性格が出る。そういった意味でも、人生と麻雀はとても似ている。
また、麻雀というゲームの面白い所は、「百戦して百勝は決して出来ない」という所にもある。運の要素が随分と強いゲームの為(だからこそギャンブルになりうる、というのもあるのだが)、百戦して八十勝は可能かも知れないが、百戦して百勝はまず無理だ。
そうなった時に大事な事は、「いかに負けから学び、いかに勝ちを大きくするか」という点にある。
これもまた、我々の人生と似てはいないだろうか。
我々は決して「勝ち続ける事」は出来ない。必ずどこかで負ける。それは不可避だ。
その時に我々は、出来る限り負けを最小限に食い止めようとする。それはその場の被害を少なくする為ではない。逆転のチャンスを残す為なのだ。
「流れ」が自らにない時には、海中深くで自らを閉ざした貝のように、その危機が去るのを待てば良い。いずれやって来る好機に向けて、傷を最小限に食い止め、力を蓄える。好機はいずれ必ずやって来る。それを正確に捉えられるかどうかは別にして。
そして再び、先輩の父上の至言である。
「人生は麻雀と同じくらい面白い」
そう。我々はいくら負けても這い上がれる。根気強く待てば、また再び逆転のチャンスはやって来る。麻雀で百戦連続で負け続ける事が不可能なように。
一発を狙わなくても良い。ザンクを10回上がれば(そして時にそこに満貫やゴンニが混じれば)、それは役満にも匹敵する。少しずつ、「流れ」を自らに引き寄せていけば良いのだ。
「人生は麻雀と同じくらい面白い」
ここ最近私が聞いた中では、トップクラスにポジティブで素敵な言葉である。
おそらく父上の心中には「人生っていうのはすげえ面白いものなんだよ」という前向きなメッセージがあった事は想像に難くない。
さあ、それとは別に麻雀がしたくなってきた。
誰か麻雀牌と麻雀マットを持って、「雀荘なみこ」(我が家)に遊びに来ないかい?
ちなみにレートはテンゴだ。ヒリつくような高レートのギャンブルがしたい奴は他所に行ってくれ。
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コメント
福島さんごめんなさい。
この前の京都のライブ行けへんかった。
今日、後輩がボクシングの試合で負けました。
今日のブログ。私の心に「ズゥギュュュユーンンンンンンン」
ヘヴンズドアー!こいつを本にしろー!ずきゃーぁぁぁん!
ごきげんよう
投稿: ボクサー | 2010年8月15日 (日) 23時55分
ボクサーさんへ
スギューン、は新妻エイジですな。勝負事は色々ありますよね。ぼくもずっとやってたから。負けた時は悔しい。でも、悔しい、っていうのは一生懸命練習したからなんですよね。練習してなかったら、多分全然悔しくないんだと思う。
投稿: ふくしまたけし | 2010年10月 8日 (金) 12時53分