Mさんの事2
結論から先に言ってしまえば、Mさんはさほど遠くへは行っていなかった。
ある日ウチダが、そこに通う全生徒の名簿を持って来た。現在ほどプライバシーや個人情報の保護が叫ばれていない世の中である。私の高校でもそうであったが、やはりウチダの高校でも、全生徒の電話番号と住所が記載された名簿が、皆に配られていた。
ウチダが持って来たその名簿を覗き込む私達。ごくりという唾を飲み込み音が今にも聞こえて来そうだった。
Mさんの住所は、我々の住む小岩からさほど離れてはいなかった。Mさんの住所は、上野の辺りにあった。
まずそれに狂喜乱舞したのはアキラである。アキラはかねてから「Mさんが可愛い、Mさんに童貞を捧げられるのならば死んでも良い」と公言する、筋金入りのMさんファンであった。
ちなみにこの「アキラ」については、いずれ「オレ達のアキラレジェンド」というタイトルで長文を書かなくてはならない。アキラの話をしてすべった事はない。
アキラが興奮気味に言った。
「う、う、上野に…行こうぜ…っ!」
私達は言葉もなく頷いた。
(続く)
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