« カレーの作り方、そして叫び方 | トップページ | 明日はコチセッション! »

2010年8月17日 (火)

瑕を庇う

仕事のメールと電話を6件やっただけで随分と疲れ果てて、「ああもう今日は何もしたくない」などと言ってしまいそうになるほど暑い。

記録的な暑さだ。

しかし、何もしないでいる事を許されるほど私には余裕は無い。

譜面も書かなくてはならないし、ピアノの練習もしなくてはならない。布団も干さなくてはならないし、昨日作ったカレーを救出しなくてはならない。

カレーを救出、というのは。

昨日、寸胴鍋でカレーを作ってみた。分量がべらぼうに多くなるので、思ったよりもカレー粉が大量に必要になる事に途中で気付き、カレー粉を何回も買いに出かける、という失態はあったものの、概ね美味いカレーが出来た。その事には満足していた。

しかし、再度火を入れておこうと思い、鍋を火にかけていたら、鳥頭の私はその事をしばらく忘れてしまい、鍋を十分ほど放置してしまったのだ。

当然、カレーが焦げた。

この絶望感といったら無い。

苦労して、手塩にかけて煮込んだカレーから煙が上がっているその様子を目にした時、私の脳裏には「絶望」の二文字のみが仰々しく浮かんだ。

ただし、それはまだ修復可能なレベルであった。火事で言えば、まだ「ボヤ」の段階であったのだ。

しかし、そこには苦味が残った。まるで人生だ。甘いばかりが人生ではない。苦いこともある。辛いこともある。

今日、私は思案した。それを復活させる方法を。

思案した挙句に私が買ってきたのは、ヨーグルトである。これをどばどばとカレーに入れる。

今度は慎重に火を入れる。小さな火で、そして入念にかき混ぜながら。

すると、これが当たった。

勿論、一度ついた「焦げ」の烙印は決して落ちる事は無い。過去の過ちを決して消し去ることが出来ないように。しかし、それでもカレーは随分と「マシに」なったのだ。

我々人間が決して贖(あがな)う事の出来ない罪と共に生きているように、私が昨日作ったカレーも、「焦げ」というその瑕(きず)と生涯を共にしなくてはならない運命へと導かれた。

しかし、だからと言って生きていてはいけない訳ではない。

私はお前の瑕を庇おう。そういって現れたヨーグルト。それと共に生きていけば良いのだ。

人間には「取り返しのつかない事」など、それほどたくさんは無い。

カレーにも無い。

だから今日もカレーは生きていくのだ。

「焦げ」という瑕と共に。それを誰かに庇われながら。

|

« カレーの作り方、そして叫び方 | トップページ | 明日はコチセッション! »

グルメ・クッキング」カテゴリの記事

コメント

料理は、一回失敗してしまうと、中々取り戻すことが出来なくなるよね~(>_<)私も良くやります。そして泣く。そう、焦がしちまったら、どうしたって苦味は消えないのよね。苦くなると子供は食べてくれないので、責任は自分が全て負う羽目に。

投稿: クロサバ | 2010年8月23日 (月) 23時33分

クロサバさんへ
そっか、子供は苦いの嫌いだもんね。そうなんだよね、焦がしちゃうとなかなか元に戻らないんだよね。

投稿: ふくしまたけし | 2010年10月 8日 (金) 13時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« カレーの作り方、そして叫び方 | トップページ | 明日はコチセッション! »