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2010年5月21日 (金)

料理は愛情

昨日は簡単な料理の写真でお茶を濁したので、その「料理」に関するコラムを少しだけ。

日本の料理と言うものは、私の味覚的な好き嫌いという贔屓を別にして見ても、おそらく世界でもかなり高いレベルにあると思う。インド人が日本のカレーライスの美味さに驚く、同様にイタリア人が日本のナポリタンの美味さに驚く。こういった例からもそれは伺える。何故日本の食文化はかくも高水準なのだろうか。

当然な理由の一つに経済的な側面がある。昨今は不景気だなどとは言っても、やはり日本の経済水準は途上国などのそれに比べると遥かに高い。安全で高品質な食材を容易に手に入れられる事は、我々の食卓を潤沢にしうる大きな要因の一つだと言って良いだろう。

では、同じ先進国の中でも日本の料理が美味い理由を考えてみたい。

一つには、「出汁の文化」があると私は思っている。

煮干、昆布、鰹節。他にも様々あるが、日本の料理は極端に言えば「出汁の料理」だ。化学調味料やスパイスに頼らずに、出汁の味をしっかりと食材に染み込ませる事で味わいに奥深さを与えるという手法は、日本独自のものだ。「出汁をとる」という行為を初めに発見した日本人は本当に偉大だと思う。

また、宗教的な側面から食材に制約が殆ど無い、というのも強みの一つであろう。豚を食べないイスラム教、牛を食べないヒンズー教、といったような制約は、日本人の間ではそれほど普通ではない。我々は、個人的な好き嫌いを別にすれば、比較的「何でも食べる」。同じような理由から中華料理が発展した事を考えれば、これも理由の一つだとして挙げて良い。

そして私が思う、「料理を美味くさせる最たる理由」とは、その精神性、つまりは「思いやり」だ。

例えば日本の典型的な朝食のメニューを挙げてみよう。

白米に納豆。味噌汁。魚の塩焼き。漬物。

いわゆるスタンダードな和食の朝食である。このメニューを見た時に、その栄養バランスの注目してみたいのだが、そのバランスの良さはなかなかのものだろう。白米により炭水化物。納豆により植物性タンパク質。魚で動物性タンパク質。味噌汁と漬物で野菜も摂れる。本当にバランスが良いのである。

何故そのようにバランスが良いのか、と言えば、そこに作り手の「思いやり」が込められているからに外ならない。

食べてもらう人間に健康であってもらいたいという願いが、そのような献立を作り出す。ここ最近、私は本当にその事を実感している。

昨日のメニュー、カレー風味のミートソーススパゲティと野菜スープであるが、当初私はスパゲティだけを作ろうと目論んでいた。しかしそこで一度思い直し、あ、少し野菜が足りねえな、野菜スープも作ろう、と、こうなった訳である。

以前私が一人暮らしをしていた時には、そのような栄養バランスなど微塵も考えずに料理を作っていた。例えば、インスタントラーメンとドンブリ飯、といった組み合わせ。カロリー過多なだけでなく、バランスも非常に悪い。その時には私は、自らの空腹を満たせればそれで良い、という考えの基にそういった献立を作っていた。そこには思いやりは無い。

また、誰かに食べさせようと思うから、「折角ならば美味いものを食わせてやりたい」という頭が働く。だからこそこまめに出汁をとったり、丁寧に灰汁を取ったりという作業に余念がなくなる訳だ。結城貢先生の言葉通り、まさに「料理は愛情」なのだな、と、そう感じた。

そしてそこに私は日本的な家族の美しさを見るのである。

欧米人たちのように、口に出して「愛している」と言うばかりが愛情表現ではない。口ではそう言っていながら、食卓に並ぶのはハンバーガーとコーラ。何じゃそりゃ、と思う。

そんな事は口に出しては言わないけれど、きちんと相手の身体を思いやって料理を作る。高額な金はかけなくとも、バランスの取れた美味い料理が食卓を彩る。それは立派な愛情表現なのではないだろうか。

そう思うと、今日も料理を作る事が楽しくなるのである。

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コメント

私は魚が好きだし、大多数の日本人は魚ベースの料理が好きだけど、魚嫌いまたは食べ慣れない人にしてみれば、私達が美味しいと思う和食は「食べられるものないな」ってことになっちゃうよね。日本は海に囲まれた島国だから、伝統的に魚ベースの料理が多いものね。だしを考えても、煮干、昆布、鰹と全部海産物だし。昔、外国人の友人に「日本の食事は全部魚臭い」と言われたことがある。海や川や湖が少ない国の出身なら、必然的に肉メインになるだろうし、育った環境によって味覚ってかなり違ってくるよね。そういや、和食を支える二大調味料の醤油と味噌は大豆が原料だけど、今は大豆の殆どが輸入ものでしょう?米と一部の生鮮食品以外は、食料自給率の低い日本は、かなりの食品が外国だのみ。純和食なんて言ったって、外国産食材がなきゃ成り立たない。外国の国々に支えられる和だね。

投稿: クロサバ | 2010年5月22日 (土) 02時38分

クロサバさんへ
日本の農業はやはり色々な側面から「あまり良くない状況」にあるようですね。うん、外国頼みの和食。でも、和食のあり方って、やっぱり好きなんですよ。すごく日本人らしい愛情表現だと思う、和食って。

投稿: ふくしまたけし | 2010年6月17日 (木) 21時12分

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