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2010年5月25日 (火)

継続せよ2

昨日の深夜0時。丁度日付が今日へ変わった辺り。ふと、気が付いた。あ、今日そういえばブログ書いてねえや、と。

実際の所、その凡そ24時間前、つまり一昨日の深夜に、深夜の酒とそのツマミの写真を投稿していたから、5月24日付の記事は一つはあった事になる。けれど、それにしてもびっくりした。

実は、このブログ、「ほぼ」ではなく、「完全に」毎日更新されている。

昔は気が向いた時だけ書いていたが、それは一年ほど前にやめた。内容が有る無しという事をあまり考慮に入れずに、兎に角毎日何かしら書く、という事を自分で決めた。別に誰かがこのブログを見たがっているから、とかではない。自分の為に課した一つの試練なのだ。

同じ事を毎日続けるという事には確実に意味(意義)がある、と私は信じている。瞬間的な閃きや独創的なアイディアというものは、継続的なものが背骨として有る時に初めて輝きを見せるのだ、と。その「継続的」という言葉は、やはり一年×エックスという期間を指すのだ、私にとっては。

ピアノのレッスンを私も生業としてやっている。正規レッスンの前に、30分程度の体験レッスンをいつも行う。体験レッスンに来て、それでも「ここが良いや」と思った人だけ来て下さい、そういったスタンスを取っている。

その体験レッスンの時に必ず私が口にする言葉があって、それは「数ヶ月や半年通っただけではあまりご自身の中でも変化はありませんよ。場所や金額、勿論私との相性というものもきちんと勘案して頂いて、最低でも二年は通って頂きたい。それが出来ないのであれば、今回は大変申し訳ありませんが見合わせて頂きたい」という事だ。

これは私が自分の師匠、市川修から言われた事でもある。「お前が今練習でやっている事は、二年後のお前が出来るようになる事。だから同じ事でも兎に角続けなさい」と言われたのだ。

その時は少々それに反発した覚えがある。「いや、言われた事は何とか頑張って来週にでも、いや、明日にでも出来るようにしたいです」と。何とも生意気盛りらしい、何もわかっていない発言で我ながら痛々しいが、それは最早許してあげよう。問題は「出来る」という事のレベルを、その当時の私は相当甘く見ていたという事だ。

一つのパッセージを何度も練習して「弾ける」ようになったとする。それで「出来た」訳ではないのだ。それは語学に置き換えて考えれば、「単語を一つ覚えた」というレベル。そこからその単語が文脈の中でどう使われ、そして主語や時制によってどういった変化を学ぶ。それがまず一つだ。常套句はやたらめったらに使えば良いというものではない。使い所を学ぶというのも大切な事だ。そういった総合的な意味での理解、技術習得には最低でも二年を要するという訳だ。

私はその「単語を一つ覚えた」レベルを「出来た」状態だと勘違いしており、わが師はその事にきちんと警鐘を鳴らしてくれていたのだ。

レッスンでも同じ事をやる。地道でつまらない事を。当然、華々しいピアノレッスンを期待していた人はどんどん辞めていく。けれどしつこくそれに喰らい付いてきてくれる人も何人かいる。

東京に戻ってきて四年目になり、ピアノのレッスンを始めてからも丸三年以上が過ぎた。色んな人が入会しては辞めて、というのを眼前にしてきたが、それでも地道で派手さの全く無い練習に付いてきながら二年以上続けている人たちというのも十人前後はいる。そういう人達のピアノが、少しずつ、しかし確実に上達していくのを目の当たりにする度に、やはり継続する事の重要性を思うのである。近道も無ければ一段飛ばしも無い。けれど、少しずつ、確かに前へ進むのである。

こうして思いつくままにでも構わない、文章を綴る事、それを「継続する」事も私にとっては大事な事なのだ。だからこそ、昨日は一瞬ヒヤリとした。日々続けていた事を放棄するのは、本当にあっという間に出来てしまう事なのだから。

演奏家としての立場の私も、恐らくは少しずつであるが変化を続けている。それは私の生徒達と同じだ。様々な人から教えを乞い、吸収させて頂いている。ここ数年、特に私に強い影響を及ぼしてくれているのは、ギタリストの廣木光一氏、タップダンサーの川村隆英氏、そしてトランペッターのMitch氏。他にも私に影響を与えてくれている方々は多数いるが、とりわけこの三氏。真摯に音楽に対峙し続けている匠の方々の演奏や思考を目の当たりにして勉強させて頂くのは、幸福の極みである。

師匠が死んだ時に、「よし、一人で何とかやっていこう」と思ったが、何ともありがたい事に、そういった方々との出会いの中で私は一人では無い事も知った。

続けていく事。音楽も、文章も。決して焦らずに。

ブログは毎日書き続けてやっと一年。音楽はもう少し長いが、それでもまだたったの十年。まだまだこれから。折り返し地点にすら、辿り着いていない。

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コメント

1年経ったんですね~最初は続くのかしらんと思ってたけど(失礼)続くものですね。エラい!
私は福島くんより、ず~っと年上なのに、語彙が豊富ではないので時々感心させられたり辞書を改めてひいてみたり、勉強させてもらってます。☆久し振りにTAKAさんの名前が出て来たけどテレビでさっきタップを誰かがやっていて、まるで違う音にがっかり。また、聴きに行きますから、その時はよろしく…う、何を(笑)☆まあ、人生の中で一番良い今の時(だよね?)を楽しんでくださいな。仕事は仕事でそれなりに。

投稿: のりまき | 2010年5月25日 (火) 22時01分

こうみると、福島くんは努力の人なんだねー!引き続き頑張って!日々精進。

投稿: クロサバ | 2010年5月26日 (水) 00時56分

のりまきさん
何だかね、こう、仕事なんだか遊びなんだかどれがどれなんだかは自分でもよくわかっていないんですね。仕事が遊び、遊びが仕事、みたいな所もあるので。まあのんびり、頑張ってやります。ありがとうございます。

投稿: ふくしまたけし | 2010年6月17日 (木) 21時27分

クロサバさんへ
うーん、そんなに努力の人ではないですよ、よくサボるし。とりあえず、折角続けているし、ブログはサボらないようにしようかな。

投稿: ふくしまたけし | 2010年6月17日 (木) 21時28分

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