恐怖のMD
MD。ミニディスク。今の若い人は知っているのだろうか。
カセットテープと違って音の劣化が殆ど無い、曲の頭出しが出来る、など、出始めた当初は大変に画期的だった。確か私が中学生ぐらいの頃に世に登場した。
図書館やレンタルショップでCDを借りて来ては、よくMDにダビングした。その当時のMDは何やかんやで捨てられず、結局我が家には未だに数百枚のMDが残っている。
昔よく聴いていたMDの中に、ザ・ブルーハーツのアルバムをダビングしたMDがあった。たまたま久しぶりに聴いてみたくなり、押し入れを漁った。
タイトルも何も書いていないMDが大半なので、探すのは骨が折れる。「確か青色のMDだったような気がする…」といったような曖昧な記憶を頼りに、幾つかのMDをデッキに入れては再生、「あ、これは違うや、他の他の…」という事を繰り返している内に、とんでもないMDを発掘してしまった。
大学生時代の自分の演奏。
ぎゃー、何で出て来るんだ、そんなもん!
これは恥ずかしくて死ねる。ちょっとだけ聴いてみたが、ものの30秒でギブアップ。いやはや、ほんっっっっっっとうにヘタクソなのだ。物凄くヘタクソ。まだ二十歳かそこら、ピアノを始めたばかりのヘタクソでヘタクソを煮染めたような私の演奏。勿論今も「上手い」とは言い難いが、それにしても実にヘタクソな私の演奏がそこには収められていた。恐らくは大学のジャズ研の発表会辺りの録音だ。
今ならもうちょっとは上手に弾けるんだけどな、とも思い、このピアノを弾いている奴の後頭部を鈍器のようなものでしこたまに殴りつけたい!とも思ったが、それと同時に思い出した、「この頃、ピアノ弾くの楽しかったなあ」と。
技術はまるでなかったし、「表現したい何か」があったのかも怪しい。プロのピアニストになろうなどと、その頃は微塵も考えていなかった。でも、楽しかった。夜な夜なジャズ研の部室に集まって、ガチャガチャとヘタクソなジャズもどきを演奏しているのが楽しかった。
その「恐怖のMD」をちらと聴いて、そんな事を思い出した。
今もピアノを弾くのは楽しい。思ったような音が出たり出なかったり。しんどい道だとは思うが、やはり楽しい事には変わりは無い。
但し、幸か不幸か音楽をする事が「仕事」となってしまった今では、「楽しい楽しくない」というのとは別の所で、「日常」として音楽をやっている部分も多分にある。「さ、メシ食おうかな」というのと同じテンションで「さ、ピアノの練習するべか」といった具合に。
非日常だった音楽が日常となってしまった、その事に対しての不満は無い。自分で選んだ道なのだから。
けれど懐かしく思い出したのだ。あの京都府立大学のジャズ研の部室へ向かう時のワクワクした感じ。無条件に音楽が楽しかったあの頃の気持ち。そういうのも悪くないな、と私は思う。
今日、MDの束を弄っていたら、そんなMDを見つけた。
その後に当初の目的通りに発見したブルーハーツのMDを聴いたら、すごく楽しそうにヒロトが歌を歌ってマーシーがギターを弾いていた。
そんな事に、何だかとても心を打たれてしまったのだ。
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