涙を堪え切れずに
午前中から平井の税務署へ行く。確定申告だ。散々あちらこちらを盥回しにされて、税金やら何やらを6兆円ほど納めてくる。今年一年間、日本で作られる道路やら何やらはおよそ全てがその金から作られる事だろう。
さて、昼の二時過ぎに家に帰ってきて、私は一人で泣いた。涙を流してしまった。
事の顛末はこうだ。
自転車で平井の税務署まで行っていたのだが、本日は広島カープと阪神タイガースのオープン戦が13:00からやっていたので、私はそれが見たくて仕方が無かった。家に帰ったら即テレビ観戦、そう思いながら、自転車が赤信号で止まる度に携帯電話で「広島カープモバイルサイト」にアクセスしながら試合経過を見守っていた。
カープは1対0で勝っていた。私はその事実に喜ぶと共に、もう一つの不安を抱いていた。
オープン戦が見たい、だけではなく、私は前田智徳が見たかったのだ。
前田が代打で登場するのは恐らくは試合終盤以降、ランナーを溜めたチャンスの場面で登場するだろう。平井大橋を渡って小岩に戻っているその時には、まだ前田は登場していなかった。
もしも前田の打席を見逃してしまったら嫌だな、そう考えながら私は家路を急いだ。
家に帰って来た時には試合は6回表、カープの攻撃だった。
状況は1アウト2塁3塁、打席にはキャッチャーの石原慶幸が立っていた。
「おお、チャンスじゃないか」
私がそう思ったその瞬間、石原は三遊間を強烈に破ってタイムリーヒットを放った。
「やったー、二点目!」私は歓喜した。
久しぶりに歌う「宮島さん」。宮島さんの神主がおみくじ引いて申すには、今日もカープは勝ーち勝ーち勝っち勝ち!である。この瞬間、カープファンとしてはまさに最良の時である。
続くバッターはDH小窪。
と、思ったら。
代打が告げられた。
登場したのは背番号1。そう、前田智徳である。
私は久しぶりに映像で見る前田智徳の姿に、早くも涙を堪えるのに必死だった。
またこうしてあなたの打席を見れるとは…お帰りなさい、前田智徳…
そう、心の中で呟いた。
相対するピッチャーは、タイガースのルーキー、二神投手。これからのタイガースを担う若手の有望株である。
二神投手がいささか緊張した面持ちで投じた一球目は、内角高めのストレート、ストライクゾーンとボールゾーンのぎりぎりを行く、絶妙なボールであった。
しかしその初球、前田智徳は、一振りで斬って落とした。
ライトスタンドに高々と吸い込まれていく白球。文句の付けようの無い、どこまでも美しいホームラン。その芸術性たるや、野球というスポーツの辿り着く一種の極みではないだろうか、とさえ私は思ってしまった。鳥肌が、止まらなかった。
そしてその瞬間、私の目からは涙がこぼれ落ちていた。
堪えても、堪え切れなかった。
奇遇な事だが、昨日、私は『前田智徳の肖像』という自作曲を書き上げたばかりだ。
前田智徳、今日のホームランは復活の一打であり、始まりの一打だ。
今年の前田智徳からは、目が離せない。
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