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2010年1月19日 (火)

二つの訃報

昨日、一昨日と立て続けに、著名人の訃報が二つ、飛び込んできた。

歌手の浅川マキ氏と、元プロ野球選手の小林繁氏だ。どちらも少し私にとっては思い入れがある著名人である。勿論、知り合いだった訳ではないのだけれど。

初めて浅川マキ氏の歌を聴いた時、私は決して衝撃を受けた訳ではない。けれど、とても自然に、すんなりと彼女の歌声は私の心に入ってきた。

少し気だるそうな歌い方と、いささか退廃的な世界観。

彼女はジャズを志向した。また、ブルーズを志向した。個人的な感想を言えば、私は彼女の歌は良くも悪くもジャズやブルーズとは少し違うと思っている。しかし、そこには確固たる彼女の世界観が存在する。それは大変な事であり、つまりそのようにして「浅川マキのジャズ」というものを確立できたのだったならば、ステレオタイプ的な「ジャズ」という要素は無くても全く構わないのではないか、と私は思うのである。

「浅川マキはジャズなのか?」と問われた時に、私は「少し違うような気がする」と答えるだろう。しかし、「浅川マキって良いの?」と聞かれたら、「良いし、好きだ」と答えるだろう。

私は彼女の作品を聴いて、一度涙を流した思い出がある。その思い出も相まって、私にとってはちょっと特別な歌手だったのだ。

享年67歳だという。合掌。

小林繁氏の現役時代というものは、子供だったもので私には殆ど記憶に無い。サイドスローから繰り出される巧みな変化球と強気なストレートは、あくまでも録画映像、VTRの中でしか見たことはなかった。

だが、現役時代を知らぬ私でも、小林繁氏の名前は、当然知っていた。そう、江川卓の「空白の一日事件」。この事件に運命を翻弄された野球選手こそ、小林繁その人だったのだ。

プロ野球に興味の無い方は「空白の一日事件」と聞いてもピンと来ないかも知れないが、これは恐らくは日本プロ野球史上稀に見る大スキャンダルであった。

1979年、阪神タイガースに入団が決定した怪物ルーキーの江川卓だが、何とたったの一日で読売ジャイアンツへのトレードが決定。交換でジャイアンツから放出された選手が、当時のジャイアンツのエースであった小林繁だった、という訳だ。

この事が二人の間に大きな溝を作った事は言うまでも無いが、その後約30年を経て、2007年に、日本酒のCMで何と二人は邂逅を果たしている。私にはとても衝撃的なCMであったし、このCMを印象深く覚えておられる方も少なくないのではないだろうか。

その中で、とても心に深く残る小林繁の言葉がある。

「どうもすみませんでした」と頭を下げる江川に対して、「謝る事なんてないよ」と制してから盃をカチンと鳴らす。

「しんどかったよなあ。オレもしんどかったけどな。二人ともしんどかった」

小林繁という人が、とても優しい人なのだという事がよく伝わってきた。私はこのCMにもつい涙を流していた。

享年57歳。合掌。

二人とも、若過ぎる。

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コメント

浅川マキさんのご逝去は本当に残念でなりません。

北の離れ島に住んでる人間としては
機会があったら一度生で観たい、聴きたいとずっと思っていた方だけに余計にチャンスを逃したことが悔やまれます。

一期一会、合掌。


今月は随分と、名のあるひとが彼岸に渡りますね。

投稿: 和香 | 2010年1月20日 (水) 07時37分

和香ちゃんへ
ぼくも結局一度も生で見ず仕舞でした。あれだけ独特の世界観を持っている人って言うのも珍しいですな。でも、もう仕方ない。見れなかった事は。それよりも、ぼくらが彼女の歌を聴いて何かを感じた、という事実の方が大事なんだと、そう思います。

投稿: ふくしまたけし | 2010年2月 4日 (木) 14時32分

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