鉄チラ
奈美子の家が丸ノ内線の東高円寺駅近辺にあるので、最近はよく丸ノ内線に乗る。
私の行動範囲は、大体はJRの総武線と山手線でまかなえていたのだが、そういった訳で最近は東京メトロにもよく乗る訳だ。
JRの電車が基本的に地上を走る電車であるのに対して、東京メトロは地下を走る地下鉄が殆どだ。勿論丸ノ内線も地下鉄だ。
だが、丸ノ内線は時折地上に出る事を読者諸氏は御存知だろうか。私は、この丸ノ内線がチラッと地上に出る、パンチラの如き瞬間(俗に「鉄チラ」と言う)がたまらなく好きなのだ。
丸ノ内線は、池袋から御茶ノ水へ向かい、そこからぐるっと方向転換をした後、東京の西部、荻窪を終点とする経路を進む。大体の路線図で言えば、アルファベットのCを裏返した、或いは平仮名の「つ(もっと下部が長いけれど)」のような軌道を描く。
その中で、例えば茗荷谷−本郷三丁目間であったり御茶ノ水駅の手前であったり四ッ谷駅周辺で、丸ノ内線は、刹那、地上に姿を表す。
ずっと地下で誰の目にも触れず、寡黙に大勢の人間を運び続けた職人気質な「昭和の男」が、ほんの一瞬、陽の目を見るのだ。
この瞬間が、私はたまらなく好きなのだ。
例えば池袋から。
奈美子が住む東高円寺まで訪れようと考えたら、普通に考えれば新宿まで向かってそこで丸ノ内線に乗り換えて、というルートが妥当である。
しかし、私は時間さえ許すのであれば、池袋から東高円寺まで、乗り換えナシの丸ノ内線一本を選択したい。
乗り換えナシも確かに魅力なのだが、一番の魅力は先程より述べているパンチラの如き「鉄チラ」ゆえである。
鉄チラは確かに地上より眺めるのも決して悪くはないだろう。
しかし、車内から眺める「鉄チラ」、これは至上の美しさである。
地下を這うドブネズミ、それが光を見た時の美しさ。
そんなものを、私は丸ノ内線の鉄チラに感じるのである。
光と闇の交錯した人生劇場、それが丸ノ内線なんである。
なんつって。
実は、今日(日付的には昨日)のライブの私の演奏が酷かった。
凡ミスの嵐、ヘタクソの極み。
かなり死にたくなったが、共演のベーシストのヤマちゃんに、「すまん、もう死ぬわ」と言った所、「死なないくせに」と笑われた。
うん、死なない。
優しい共演者に恵まれている事は嬉しいけれど、甘えてはいけない。
明日からも頑張ってやります。
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