最期の一杯
今際(いまわ)の際に、何を食いたくなるのだろう。そんな事を考える事はないだろうか。私はよくある。間もなく事切れるというその時、果たして私は何を食いたくなるのだろうか、と。
新鮮な魚だろうか、あっさりとした醤油ラーメンだろうか、とびきり美味い日本酒だろうか、はたまた大好きなビールだろうか、と。
そのどれもが可能性としてはありうるが、私には「最期の一品は恐らくはこれではないか」という予感がある。
それは添付写真の「うどん」である。(添付写真はネギで隠れて見えないが、これは紛れもなくうどんである)
昨夜、家で一人で酒を呑む私を、麻薬中毒患者の禁断症状のように激しく「うどん欲」が襲った。
…うどんが食いてぇよお…なぁ…うどんが食いてぇよお…と。
頭の中では激しく「うどん!うどん!」のシュプレヒコール。
「ワシは明日起きたら丸亀製麺小岩店に行くんじゃ…そこでネギをたっぷり乗せまくったうどんを食らうんじゃ…」
私は独りそう呟いた。
そして今日、Oh! Soybean Paste! (オー!味噌か!)こと今日、12月31日。私は朝起きると珈琲を一杯飲み、二時間ばかりピアノの練習をした。こんな日でも練習は練習としてやらなくてはならないのが芸事の厄介な所なのだが、とにかく練習をした。ジョン・コルトレーンの「Giant steps」のソロパートのコピーを2コーラス分、それからハノン的な指を動かす練習、目下の課題であるピアニッシモでの継続的な演奏、左手のストライド奏法とフロントを想定したバッキングの練習も。
そんな事をしている間も私は自分に言い聞かせていた。「集中してやるんだ、なるべく早く終わらせるんだ、終わったらうどんを食わしてやる」と。
二時間弱かけて、「今日はここまで」という所までが終わった。手前味噌(my soybean paste)のような言い方になるが、今日の集中力はなかなかのものだった。毎日これぐらいの集中力で臨めると良いのだが。
そんなこんなで私は小岩駅の駅ビル内にあるうどん屋、「丸亀製麺」へと向かった。
注文したのは「かけうどん並」、280円。ギャー!安い!
さあ、これにネギを親の敵のように乗せよう!そしてこれを貪り食おう!と思った、その刹那である。
私の視界にある棒状のものが飛び込んで来た。
それは眩いばかりの煌めきを放ち、そして馨しき芳香を漂わせながら、凛として其処に存在していた。
そう、それは「ちくわのあげたん」である。
ち、ち、ち、ちくわのあげたんやとぉぉぉぉぉぉ!?
まさにそれは私にとって青天の霹靂であった。
うどんにネギ、そして天かす、以上!
このうどんの在り方に私は一種の様式美にも似た潔さを感じていたし、「うどんの主役はうどんであり、それを邪魔するものがあってはならない」、それは私にとってはハムラビ法典よりも厳重な不文律であった。
だがどうだろう、眼前で煌びやかに輝くこの「ちくわのあげたん」は。し、しかも値段を見たら100円やないかああああ!
…
…
もう…やめよう…
つまらぬ掟で自らを縛るのはやめよう…
乗せよう…
ちくわのあげたんを…乗せよう…
私の不文律は脆くも崩れ落ちた。
私は、ちくわのあげたんを、うどんに乗せた。
これが、まあ、美味いの何の!
死ぬ間際の一杯、それは恐らくうどんの一択でキメ打ちだ。
いやー、美味かったなー。
これが多分今年最後のブログ更新です。
訳のわからぬ文章にお付き合い下さった皆様、ありがとうございました。
良いお年をお迎え下さいませ。
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