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2009年10月 8日 (木)

過ちを正す

我々人間は、過ちを犯す罪深い生き物だ。

そう、生まれてこの方過ちを犯した事のない人間など皆無なのだ。

しかし、過ちにはレベルがある。取り返しのつかないレベルの過ちというものも存在する。例えばそれは人を殺めてしまうような過ちだ。

そういったS級の過ちを除けば、大体の過ちは凡そ償う事が出来る。一つの過ちから、反省し、学習し、修正する。それは「過ちを犯してしまう」という宿命を与えられてしまった我々人間が編み出した窮余の策である。起死回生の能力である。

私はいつも思う。「間違える事がいけないのではない。間違いを修正出来ない事がいけないのだ」と。確か足立区立桜中学の三年B組を担任していたゴールデンエイト先生も似たような事を言っていた。

「彼らはまだ未熟なんです!だから間違えるんです!間違えたら、それは間違いだと繰り返し繰り返し教えてやる!それが教育なんです!」と。

最早、熱いを通り越してクドい、というのがゴールデンエイト先生の長所でもあり欠点でもある。

「君たちはまだ15歳。『死ぬ』なんていう言葉をそう簡単に使うなよ!」

これもゴールデンエイト先生のお言葉だが、ライトなノリで「じゃっ、また来世♪」などとしょっちゅう口に出す私には若干耳が痛い。

金エイト先生の話は、ついつい力が入り過ぎて話が脱線してしまいがちだ。私は実はTVドラマの「三年B組ゴールデンエイト先生」のファンなのだ。

話を戻そう。私達人間は過ちを犯すが、それを修正出来るという話である。私は今日、そういった人間独自の修正能力を、自らの生活の中でリアルに実感した。

昨夜は、久しぶりに彼女の奈美子に会いに、東高円寺まで行っていた。

奈美子は先日、引退を表明した。南海ホークスからソフトバンクホークスまで、背番号90を背負って44年間、愛用のバット「物干し竿」と、バッターボックスへ入る時の酒飛沫(さけしぶき)を吹き付けるパフォーマンスでファンを長きに渡って魅了し続けた。勝負強いバッティングで、タイトルを獲得した事も一度や二度ではなく、前監督の王貞治氏は、「俺はチョーさん(長嶋茂雄氏)とのONがなくなった後も、ナミ(奈美子)と一緒に新しいONが出来る。こんなに嬉しい事はないよ」といつも目を細めていた。練習に対する姿勢は誰よりも厳しく、妥協を一切許さないその姿は「鬼のナミさん」と若手から憧憬混じりに恐れられていた。

そんな奈美子が、バットを置いた。引退試合の前日、私にはたった一言だけ、「もうここいらにしておくよ」と静かに笑った。私はやはりたった一言、「お疲れ様」と肩を叩いた。

結果から言えば、現役最後となる打席で、奈美子はライトスタンドへと突き刺さる逆転サヨナラホームランを放った。その鮮やかな放物線を見ながら、この放物線をもう見ることは出来ないのかという寂しさと、奈美子、まだまだ現役いけるだろ!?という未練とが交錯した。しかし、それは私が決める事ではない。奈美子が、もう辞めると決めたのだ。口出しは無用だ。

そんな現役を引退したばかりの奈美子と、遅い夕飯を一緒に食べて、寝る前に二人でビールを少しだけ呑んだ。奈美子は、部屋の片隅に立てかけた「物干し竿」を見て、時折寂しそうに目を俯かせていた。雨音が、部屋の外で複雑なポリリズムを奏でていた。

明けて今日。東高円寺から小岩まで、私は昼頃に電車で帰ろうとしていた。

しかし本日は未曽有の台風が本州を縦断しているさなかであり、交通網には大いに狂いが生じていた。

私は東高円寺から御茶ノ水まで、地下鉄丸の内線で何とか辿り着く事に成功した。そこからは総武線に乗り換えて20分ほどなのだ。

が、乗り換えた総武線が一向に動かない。30分待とうが一時間待とうが、動く気配は微塵もない。総武線は、台風の影響を受けて完全にストップした状態だと言うのだ。

困った私は思案した。流石に御茶ノ水から小岩まで歩く訳にはいかない。しかし、このまま電車内で手をこまねいている訳にもいかない。

私が選んだ結論は、御茶ノ水から上野まで歩き、そこから京成線に乗り、京成小岩まで行く、という結論であった。

この案は、結果としては効を奏した。京成線は比較的順調に動いており、私は京成小岩駅まですんなりと辿り着く事が出来た。

問題はその道中である。

御茶ノ水から上野まで、歩けば20分〜30分少々かかるのだが、私はその距離を歩く事に「まあ良い運動にもなるし。あわよくばちょっと痩せるし」などという算段をうっすらとしていた。

だのになぜ…

私は悪魔の誘いに乗ってしまったのか…

私は何故、過ちを犯してしまったのか…

過ちとは、豚骨ラーメンである。あろうことか愚かな私は、道中で豚骨ラーメンを食べてしまったのだ。

店の中から漂う暴力的なまでに美味そうな豚骨スメル、そして500円という低価格設定。

私はほぼ脊髄反射でその店に入っていた。

ダイエット?何それ?食えるの?知らない。

そんなマインドで店内に入った。

予想通り、なかなかの美味さだったので貪り食った。そして傍らに見えた張り紙には「替え玉無料」の文字。私はまさにジャンキーのように虚ろな目をしながら「替え玉…お願いします…」と店員に呟いていた。

そうして、多量のカロリーを摂取した私。ここまでが過ちである。

だが、先ほどから言っているように、私達人間は過ちを犯すが、それを修正する事が出来る。

この場合の修正とは、ロンモチで黒烏龍茶である。私はすぐにコンビニへと急いだ。そして、黒烏龍茶を購入。グビグビといった。

これにより、豚骨ラーメンのカロリーは恐らく完全にチャラになった。なので、もう何を食っても大丈夫だ。

皆様も、過ちを犯した時には、まずその修正案を考える事を忘れないようにしてもらいたい。

私からの心優しい提案だ。

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