悪魔的僥倖
昨日の日曜日。
精神的にも肉体的にも随分と解放されたような、一山越えたような感を得て、1日のんびりとする。
彼女の奈美子と二人で新宿まで映画『カイジ』を見に行く。
一夜限りのギャンブルクルーズ、「エスポワール(フランス語で希望)」、そんな船に奈美子は嘗て一度乗った事があるらしく、映画に描かれたその世界に事ある毎に舌打ちをしていた。
曰わく「ざわつき足りねえ……っ」と。
奈美子曰わく、実際のエスポワール並びに地下労働所は、映画で描かれたよりも遥かにざわつき、ヒリついていると言うのだ。
「アタシはねえ…あそこで人間の裏切りを見たよ…本当の裏切りをね…そして地下に堕ちた…そこからはもう、真の地獄だった………っ!」
絞り出すように奈美子は語った。目にはうっすらと悔し涙を浮かべ、両の掌は強固に握られ、強い拳を形作っていた。二の腕に少し血管が浮き上がったせいで、私は拳の中で突き刺さった爪を想像した。
映画を見終わった私の感想は、「ざわざわが足りない」、「鉄骨渡りは実写でリアルになったお陰で怖さUP」、といったものだったが、奈美子は「マイルドかつソフト過ぎる……っ!」と随分とご立腹だった。
昼にラーメン屋「青葉」でラーメンを一緒に食べた時には、「美味すぎる………っ!悪魔的だ………っ!」とご機嫌だったのに。
奈美子は帰りに「勝たなきゃゴミだ!」とずっと呟いていたので、私は手を繋ぎながら「そうだねえ、人生最後の大勝負、そんな所でなおもまた負けるような、そんなヤツの事はもう知らんよねえ」と宥めるように相槌を打った。
すると奈美子の表情が一変した。
「いや、そこまでは言ってないっていうか…いや、負けた人にもきちんと人生があって…いや、アタシ、ちょっと言い過ぎちゃった…」
奈美子は明らかに動揺している風であった。
「猛省だっ……!猛省しなくてはならん……!」奈美子は急に大声を上げた。
「焼いた鉄板を持って来いっ……!その上で土下座をして猛省するっ……!焼き土下座だっ……!」
奈美子がそう叫びだしたので、私は彼女を抱きしめて、「良いんだよ、奈美子、そんな事をしなくて大丈夫だよ」と必死に語りかけた。
そういう風にしていると、彼女の震えは次第に収まっていった。
「でもアタシの肩の焼き印は…決して消えないの…!」彼女はそう言って泣いた。
人間の汚れには石鹸で落ちる汚れと石鹸で落ちない汚れがある。そんな事を言ったのは、「ノースの国から」でお馴染みのブラックボード・五郎さんだ。
奈美子の肩の焼き印は消えないかも知れない。けれど、圧倒的なまでに雄大で優しい北の大地は、全てを包括し、そして赦してくれる。
そんな事もある。
とまあ。
昼間っから妄想全開日記を書き殴ったが、単に昨日は『カイジ』を観てイマイチで、「青葉」のラーメンが美味かった、とただそれだけなんですが。
今日はライブです。上野アリエス。皆川和義ハーモニカトリオです。
「素晴らしい………っ!悪魔的だ………っ!」
と言ってもらえるように頑張ります。
19:20からスタート。3セット、こってりやります!
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コメント
眠いです。寝よう(笑)。明日も3時半起き。家族の為ならエンヤコラ~。東京行きたい。ライブ行きたい。現実逃避したい…今の気分
投稿: のりまき | 2009年10月12日 (月) 23時04分
のりまきさんへ
三時半起きってむちゃくちゃ早いですね。大変だ。ぼくは大体寝るぐらいの時間です。お身体、壊さぬよう…
投稿: ふくしまたけし | 2009年10月21日 (水) 14時30分