すごく貧乏だった頃の話
先日の京都旅行の最中、久しぶりの後輩にも何人か会った。
結婚式のようなものに出ると、やはり多少は昔馴染みの知人に会うものだ。
現在も学生をしている彼ら。笑えるぐらいに金が無い。
曰わく、「缶系の酒(ビール、チューハイ等)はコストパフォーマンスが悪い。瓶系の酒(ウィスキー、焼酎等)の方が安く酔える」や「値段当たりのカロリーでモノを見たい」等々の発言。
私自身は現在も金持ちとは程遠いが、少なくとも学生の時ほど貧乏ではない。しかし、それらの発言は大変に懐かしかった。私も学生の時は彼らと同様に見事に金が無かった。
激安にして激マズの焼酎「大五郎」の4リットルペットボトルを家に常備し、スーパーで100円程度で買っておいた緑茶パックからお茶を淹れて、水道水で作った氷と共に割って作った「緑茶ハイ」を毎日呑んだ。恐らく一杯当たりの値段は10円するかしないか微妙なラインだ。
ツマミは例えば大量のモヤシ炒め、材料費20円。或いは味噌をそのまま舐める、タマネギをまんまカジる等の、人間の尊厳のようなものを初手からフルスイングでドブに捨てた恰好の糞メニュー。それでも楽しくやってたから不思議なものだ。
その頃に戻りたいかと聞かれれば、二つ返事で「No」ときっぱり答えるけれど。
貧乏でも快適に生きていく為には、それなりに知恵を絞らなくてはならない。
私は「人に助けてもらう」という完全に他力本願な基本路線を変えた事はなかったのだが、やはり時には誰からも助けてもらえない時がある。そういう時には自力で何とかしなければならないのだ。
例えばタバコ。
金が無い、だがタバコは吸いたい。しかし金が無い。
そういう時にはどうすれば良いのか。
まずは灰皿をもう一度見直す所からスタートだ。長めのシケモクでもあれば、それを吸うのが手っ取り早い。
問題は、長めのシケモクが無い時である。その時はどうするかと言えば、新たにタバコを作る。無い物は作れば良いのだ。
短いシケモクを分解して、葉っぱの燃えていない部分を取り出す。それを数本分集めると、結構な量の葉っぱになる。
おもむろに本棚から英和辞典などを取り出し、今後読まなさそうなページ(例えば「Q」の項)を一枚ビリリといく。それが葉っぱの巻き紙だ。
あとは何も複雑な所は無い。何故だかはすっかり忘れたが、私はアジアを旅行中にタバコを手巻きするスキルを身に付けていたので、そういう事はお手のものだ。あっという間にシケモクとシケモクとのジョイントタバコが完成する。
このタバコが実にマズい。パキスタンで「K2」というマズくてマズくて仕方がないタバコを愛煙し、インドでは「ビリー」というクソのようなタバコを愛煙していた私であるが、それらのタバコよりもシケモクジョイントはマズい。世界一ウマいタバコである「ロングピース」や「ショートホープ」がここまでマズく生まれ変わるのである。なかなかに劇的な話である。
しかし私はその激マズタバコを愛でて吸った。
「中古品なら悪いって…誰が、言った…?傷ぐらい…みんな、あるだろ…」
と、田中邦衛のモノマネをしながら私は呟き、シケモクジョイントを吸った。大変にマズかった。
貧乏は他にも幾つもの間違った工夫を私に生み出させた。
自家製うどん。これは激烈にマズかった。うどん玉はきちんとスーパーで買ってくるべきである。
賞味期限を二週間も過ぎた豆腐。これはヤバかった。味噌汁に入れたが、味噌汁から腐った犬の臭いがした。
「火を通せばイケる」という標語は稀に身を滅ぼす。読者諸兄は覚えておくと良い。
だがね。
そんな惨めな事を、ほぼ毎日していたにも関わらず、貧乏生活は楽しかった。
次回のバイト給料日まであと3日、残金は70円、というようなヒリつく状況。どうやら私はその状況を楽しんでいたようだ。
そんな事を、今現在リアルに貧乏を楽しんでいる最中の後輩を見ながら思い出した。本人達には「楽しんでいる」などという気持ちは殆ど無いのかも知れないが。
追記:このブログを書きながら見ていた『深夜食堂』という深夜ドラマが異常に面白かった。小林薫は相変わらずすげえ良い役者だなあ。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 小岩「Back in time」10周年ウイーク突入(2020.03.19)
- 4月17日(水)セッション昼と夜で二つ(2019.04.16)
- 今度の月曜日はサックスの登さんと(2019.03.15)
- 連絡とりづらくなっております、のお知らせ(2019.03.03)
- 一人ゲネプロ大会(2019.02.26)
コメント
貧乏時代の福島くんのブログ、めちゃめちゃ面白かったよ!哀愁のようなものを纏いつつも、最低な条件の中で頭使って少しでもいい環境を生み出す、っていう前向きに生きてるかんじや、時には状況にのまれて「死ねばいいのに」的な後ろ向きになってるかんじ、全てが力があって、読まずにはいられないような…私は一緒にその中にいなくて端から見てたから、こんな風に言えるだけかもしれないけど…でも、面白かったんだよね~。
投稿: クロサバ | 2009年10月29日 (木) 02時56分
クロサバさんへ
ありがとうございます。このブログもいつの間にやら四年以上やっていますが、初期の頃から読んで頂いてますもんね。まあ、四年前の文章とかたまに読み返すとぼくはムチャクチャ恥ずかしいんですけどね(笑)貧乏っていうのは、そんなに悪いことじゃないかも知れません。かく言うぼくも、再び貧乏生活に入りそうな兆しが少しだけあります。その事はまた追って。
投稿: ふくしまたけし | 2009年11月 6日 (金) 15時07分