緒方孝市が引退した
おがたー、おーがーた、おがたー
この一打に闘志燃やして
勝利の地へ駆け抜けろ
かっとばせーおーがーた!おーがーたー!おーがーたー!おーがーたー!おーがーたー!おがたー!!おがたー!!
完全に気が狂ってしまった訳ではない。これは先日引退した広島カープの背番号9番、通称「鬼緒方」こと緒方孝市選手の応援歌だ。
緒方の引退試合は10月10日に行われた。私はその日は一日発表会の本番だった為、緒方の引退試合は泣く泣く見ていない。ものすごく見たかったが。
落ち着いて今日、youtubeで緒方の引退試合、並びに引退セレモニーを見た。最近の世の中は大変便利だ。こうして引退試合まで見れてしまうのだから。
見ていて驚愕した。
何だ…このドラマのような展開は…と。
緒方が試合に出場したのは、八回表の守備から。全盛期に慣れ親しんだセンターの守備位置だ。そう、緒方はゴールデングラブ賞を何回も受賞している守備の名手でもあるのだ。
そしてなかなかに粋なのは、相手チームの原監督。代打に送り出したのは、嘗ての盟友、木村拓也。その木村拓也の放った打球は、まさしく見事にセンター定位置にいた緒方のグラブへ。打った木村も笑顔で一塁まで走り、捕った緒方も笑顔でそれに応えた。キムタクは打球で語った。「緒方さん、これまでありがとう」と。そして緒方もそれに守備で応えた。男同士の、言葉無き会話。本当に痺れる一打席だった。
この時点で私の涙腺は随分と緩んでおり、すでにちょぼちょぼ何かが出始めていた。
そしてその裏の緒方の打席。ここにもドラマはあった。緒方の代名詞と言えば、積極的な初球打ちである。その初球を捉えた打球は、右中間方向へと大きく伸びていく。綺麗に右中間を破る二塁打、さすが緒方、と思ったその瞬間である。緒方は二塁を蹴り、更に三塁まで猛然と走り始めた。それは俊足を売りにしていた緒方の一種の矜持であったのかもしれない。最後まで、この脚を魅せてやる、という矜持。私はそんなものを感じた。
三塁ベースの数歩手前、緒方の脚が微妙にもつれる。しかし、構わず緒方はそのままヘッドスライディング。ぎりぎりの所でセーフとなり、何と驚愕の三塁打を放ったのだ。
しかしそれを見ながら私はこう思った。緒方さん、あんたそういう無茶なプレーで怪我ばかりしてきたじゃないか。溢れる野球センスと身体能力、間違いなく球界屈指の選手だったあんたはそうやって自分を犠牲にしてしまったじゃないか。でも、最後までその全力プレーなんだね。あんたはやっぱりバカだね。最高の野球バカだね。
そう思っていたら、私の目から何かがとめどなく溢れてきた。こんなに感動的なスリーベースヒットは、見たことが無い。
感動も乾かぬ間に、次の展開がやって来た。バッターボックスにはピッチャーの大竹。その打席、相手ピッチャーのワイルドピッチ。キャッチャー阿部がボールを後ろへと逸らしているその間に、緒方は本塁へと突入した。
全力で走る緒方。だが、やはり最後の所で脚がもつれる。先程のプレイバックのようなヘッドスライディング。緒方の差し伸ばしたその両手は…
あと、数十センチ、いや、数センチ、ホームプレートに届かなかった。野球の神様は、最後の最後で緒方にほんの少しだけ意地悪をした。
その届かなかった数センチ。そこに緒方の23年間の現役生活が凝縮されているのだろうか。そんな事を考えていたら、次から次から涙が溢れて止まらない。何というドラマなのだろう、こんな感動的なドラマはそうそう無い。
そして引退セレモニーでの言葉。「いつまでも、最後までも、ユニフォームが真っ黒になるような選手でいたかった」という言葉。実直で、決して手を抜かない、そんな緒方の性格が窺い知れる、感動的な引退挨拶だった。
花束贈呈の際には、選手会長の倉に引き続いて出て来たのは、何と前田智徳。球場がどよめいた。
前田は、花束を渡しながら緒方と熱く抱擁し、そして涙を見せた。天才の高みにある二人だけにしかわからない会話。そして前田の男泣き。もう私は限界だった。手ぬぐいタオルが、びっしょりと涙で濡れた。
という訳で、今日は朝からものすごく感動していたのです。
緒方さん、本当にお疲れ様でした!あなたの全力プレーが大好きでした!これからはコーチとして若いカープの連中にあなたのバッティング技術、そして走塁技術を余すところ無く伝えてやってください。
という事で緒方の話はここでお終い。
今週末、というか明後日ですが、ライブです。金町Jazz inn blueにて、渾身のピアノトリオ。是非いらっしゃって下さい。
10月17日(土)東京金町 Jazz inn Blue
tel 080-1263-0955
http://www.jazz-inn-blue.net/
b:長谷川明弘 ds:松永博行 pf:福島剛
19:30~start music charge:1500円
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コメント
いたく感動しました。
昔から阪神ひとすじに来たように見えて、実は黄金時代のカープを憧憬していた自分にとってはまさに緒方選手なんかは完全に自分のツボな選手でした。
引退試合は見れませんでしたが、このブログを通じてそれを知ることが出来たので、とても嬉しく思います。
緒方が去ると少しさみしいですね。。。
投稿: ga-tsuru | 2009年10月16日 (金) 02時56分
ga-tsuruへ
緒方はコーチでは残ってくれるから、それは大分嬉しい。
ただねえ、今年のカープの監督コーチ勢はスゴイよ?
監督にノムケン、投手コーチに大野、守備走塁コーチに緒方、って…
全員「超練習主義」の根性論者じゃんか(笑)!いやあ、広島根性野球の復活、ケガ人続出のフラグが立ったな。
投稿: ふくしまたけし | 2009年10月21日 (水) 14時41分