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2009年7月29日 (水)

人生もラーメンも太く長く

風邪が治らずに病院へ。触診されてから「多分肝臓が腫れてます」などと言われた挙げ句、大量の薬を処方される。マジにしばらく節酒だな、などと柄にもなく思う。

薬を飲まなくてはいけないので何か食わなくてはと思いながら、街をしばし彷徨う。あまり悩まずに近所のラーメン屋に入店。本当にこの数日間、麺ばかり食っている。饂飩に蕎麦にラーメン。よく厭きないものだと我ながら感心する。

昼飯時だった事もあり、店はそれなりの賑わい。カウンター席しかないその店で、私の右手には女性三人組、左手には肉体労働の男性二人組が座っていた。どちらも仕事の同僚だろう。私は別段気には留めなかった。

ラーメンの到着を待つまでの間、私は独りなのであまりにもする事がない。携帯電話の待ち受け画面なぞを悪戯に眺めてみたりもするが、一分ほどの暇つぶしぐらいにしかならない。ぼんやり胡椒入れなどを弄っていると、両サイドから会話が聞こえてきた。

聞き耳を立てるでもなく立てないでもなく聞いていると、驚く事に、どちら側も「同じ話」をしている事がすぐにわかった。

それは、「その場にいない他の同僚への不平不満、或いは陰口」である。

そういう事を言うことは、特別好きな訳では勿論ないが、取り立てて悪い事だとも思わない。同じ職場の同僚同士で飯を食いに来たら、他の同僚の陰口ぐらい言うだろうと思っている(諦めている)。それはそんなに非常識で不道徳な事ではない。我々はみんな、それなりに酷い事をしながら生きている。

「あいつホント空気読めねえよなあ」

「あいつ今日も朝からチョーキモかったんだけどー」

それぐらい言うさ、我々人間は不完全なんだから。誰も君たちを責めやしない。そう思いながら、思いの外早くやってきたラーメンを、私は啜った。

ラーメンは相変わらず美味くて、私は喉が腫れて口の中が荒れている為にその味を100%堪能出来なかった事がいささか勿体なく感じた。

食べ終わって会計を終えて店を出た。ママチャリに乗って家路についた。

でも、やっぱりあまり好きになれねえな、と思いながら自転車を漕いだ。

誰かを非難する。その事自体があまり好きではない。それは隠れて言おうと正面切って言おうとどちらも好きではない。誰かを非難する事でしか自分を大きく見せられないのかな。そう思ってしまう。

私自身も随分と生意気なので、「キミは全然わかってないね、全くダメ」的な事を言われる事はよくある。それこそ陰でも言われているかも知れない。そんな事はどうでも良いが。

しかし、大抵の場合、その裏側には「俺は(私は)キミと違ってわかっている」という傲慢が見て取れる。理解の深い自分を誇示しようという単純な身勝手さばかりが鼻について、「ふーん、すげえね、そりゃわかってなくてすみません」と心無い謝罪の言葉をぺらぺらと並べ立てるに留まる。

例えば、師匠市川修が生前私に「お前はホンマにわかっとらんのう」と言っていたのと先に挙げたそれとは、天と地ほどの開きがある。それは飛行機とアルパカくらい違うので、よく見比べる必要すらない。師匠以外にも、私にとって大変に意味のある「お前わかっとらんのう」を言ってくれた人は何人か(も?)いる。そういった「わかっとらんのう」は、私に多くの事を考えさせたし、確実に私の糧となった。

比して、自分を誇示したいだけの人が言う「キミはわかってないね」は、ものの見事に私の頭をスルーしていった。中途半端な苛立ちだけを残して。

弱いものたちが夕暮れ、更に弱いものを叩く、その音が響き渡れば、ブルースは加速していく。

ブルーハーツはそんな風に歌った。

ラーメン屋で同僚の陰口を叩くのも悪くないだろう。

私はそんな彼らをこうして叩いているというメタ構造もここにはある。

そもそも私にだって、自分を大きく見せたいが為に他人を非難する事だってたまにはある。人の事など言えた義理でもない。

誰が悪いのかを探し当てる為に生きてるんだったら、もうさっさと死にたい。そんな事をしてまで生きていたいとは思わない。他人はどうだか知らないが、少なくとも私は。

でも、今は私は長生きしたいのだ。風邪をひいたらきちんと病院に行くくらいなのだから。

酒も少し控えよう。

それで、もっとオモシロオカシク長生きしよう。人生は太く長くが良いな。

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