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2009年6月 5日 (金)

ブーム再燃

幾つかのブーム再燃が、私の中でやって来た。

嘗て夢中になった幾つかの事、それらは時間と共に少しずつ熱が引いていった。単純に「飽き」が来たものもあるのだろう。私の中で、少しずつ情熱が色褪せていったのだ。そういった事は、幾つもあった。

しかし、暫らくの時を経て、それらの愉悦や情熱が私の元へと戻ってくる事もある。戻ってきた際、私は何か昔の恋人と久しぶりに会った時のような若干の気まずさと、そして途方も無い懐かしさに包まれる。ああ、そう言えば君はこんな感じだったね。やあ、久しぶりだね。元気だったかい。そんな風に。

1.さて、私の中で再燃しているブーム、その一つは、「読書」である。

高校生から大学生の頃まで、周囲に比べればあまり量としては大した事はなかったが、それでもそれなりに本を読んだ。内容が難解すぎて全く理解出来ないながらも、取り敢えず最後まで頑張って読んだ、というものも多い。それはそれで良かったのかな、とも思う。若い内に闇雲にでも読まなければ、今となっては読む気の全くしない本だってあるのだから。例えば、二葉亭四迷の「浮雲」とか。今だったら絶対読まない。理由は「つまらないから」ではない。「面倒くさいから」だ。若い内ならば多少面倒くさい事でも出来てしまうものだ。

大学を出て、東京に戻ってきてから、パタッと本を読まなくなった。たまに雑誌や漫画を読んだりするくらいで、読書をする習慣というものがすっかり私の中から失われてしまったようであった。「さあ、これまで未踏のプルースト、『失われた時を求めて』、読みにかかっちゃうよ」なんて鼻息が荒くなった時もあったが、あっさり一巻の途中で挫折した。もう、文学や文芸には私は興味はないのだろうか。そう思うと、何となく寂しかったのだが。

それがここの所、再び愉しいのだ。文字を追い、頭の中で情景を想像する事が、愉しいのだ。

なので、最近は比較的頻繁に本のページを捲る。一昨日までは、当ブログでも紹介した舞城王太郎の『煙か土か食いもの』を読んでいたが、昨日からは『ビリー・ホリデイ自伝』を読んでいる。この自伝も壮絶だ。ビリー・ホリデイの人生は、もう笑えてしまうほどに不幸だ。こんなに不幸で不幸を煮しめたような人生も珍しいのではないか、と思う。今は、ビリーの少女時代が終わり、やっとジャズクラブで歌を歌い始めた辺りまで話はきた。続きが待ち遠しい。

このようにして、読書ブームが再燃している事は、私の中では喜ばしい事の一つだ。やはり本を読んで「愉しい」と感じるというのは、一つの幸せだ。これで良いのだ。

2.もう一つのブームの再燃。それは、このブログである。

お読みの諸兄で気付いている方も多いかもしれないが、ここの所の私のブログの更新頻度が我ながらすごい。こんな頻度で更新出来るのは、しょこたんかニートか私くらいのものである。結構な更新頻度だ。

理由は明快で、ブログを書くのが、今、とても愉しいからだ。

ブログを書き始めた時、読んでくれている人の数は今の半分どころか四分の一もいなかっただろう。けれど、書くのが愉しかった。一生懸命エッセイを書いて、それを誰かが読んでくれている、そう思うと心が躍った。下らない下ネタを書いて、そして誰かがそのネタを見つつパソコンのモニターの前でぷっと吹き出してしまっている事を想像すると、とても愉快だった。昔からずっとレポートや作文は好きだったから、その延長だ。一銭の得にもなりやしないが、それはひどく私を慰めた。

少しずつ、その情熱が薄れていった。飽きていった。

エンターテイメントも意識はしていたが、やはり基本的には書きたい事を正直に書いていた。正直に書くと、結構怒られる。出る杭は打たれる。非難を浴びるのだな。

特に、顔の見えないこのインターネットという世界では、容赦の無い罵詈雑言が容易に跋扈しうる。うんざりするような人間のうんざりするような中傷というのは、私が想像していた以上に数多く存在した。それは、昔も、今も。

そういうのが鬱陶しくなると、今度は私があまり本音で書かなくなる。「こういう事を書くとまた怒られちゃうんだろうな、メンドくせ」。そんな事を考えると、書くのもつまらなくなったが、最近は随分開き直ってきた。ある天啓が私の元へやって来たからである。

「怒られたら怒られたでいーや」

これである。

今後怒られた際には、杓子定規に「マジすんませんでした。チョー反省しまくってます」と謝る事に決めた。勿論、反省なんて1ナノもしないけれども。

そう思うと気が楽になって書きたい事を書ける。やはり人の顔色を窺うというのは基本的には苦手だ。そういう事を第一に考えると億劫になるが、開き直った今はブログを書くのも愉しい。

という事で、良識のある大人な方々は今後一切、当ブログを開かない事を推奨いたします。万が一間違って開いてしまわれた場合には、光の速さで画面上左上の「←戻る」を鬼クリックです。マウスが壊れるのではないか、というほどに左クリックです。

多少慇懃無礼な言い方になりましたが、要約すれば「ムカつくぐらいなら初めから見るな」という事です。シクヨロ。

3.最後のブーム再燃、それはCoccoである。こっこである。あっちゃんである。

昔、Coccoという歌手が好きだったのだけれど、あまり聴かなくなってしまった。何故だったのだろうと今も思うけれど、まだわからないよ。

過日、いつものように深夜に独りで飲酒をしていた折、急にCoccoが聴きたくて聴きたくて仕方がなくなった。それは、無性に、である。

深夜の飲酒中に聴きたくなる音楽というのは、私の中では定番が幾つかある。少し挙げてみよう。
・セロニアスモンクのソロピアノ
・バドパウエルの最晩年のトリオ演奏
・ビリーホリデイ
・バディガイのアホ臭い2音半チョーキング
・サンハウスのドブロギター
・ボブディランの屁のような声
・中島みゆきの死にたくなるような歌
・ブルーハーツの青臭い歌
・矢野顕子のピアノ弾き語り
等々

不思議な事に、同じセロニアス・モンクでもトリオものは酔っ払っていない時に聴きたい。大好きなエロール・ガーナーやオーティス・スパンにしても同様である。ロバート・ジョンソンもそうかな。ランディ・ウェストンやアブドゥラー・イブラヒムにしても、比較的クリアな頭の状態で聴きたい。この違いは何なのであろうか。自分でもわからないけれど。

そして、上記の酔っ払っている時に聴きたい音楽リストに突如Coccoが乱入して来た。

私は自分の部屋の押入れの中にある大量のMDをがさごそと探し出し、Coccoの『クムイウタ』というアルバムを録音したMDを発見し、おもむろにそれを聴いてみた。

もう掛け値なしに素晴らしかった。

~きっと飛び魚のアーチをくぐって宝島に着いた頃あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ。人は強いものよ。そして儚いもの。

~それはとても晴れた日で、未来なんていらないと思ってた。私は無力で言葉を選べずに、帰り道のにおいだけ。優しかった。生きていける。そんな気がしていた。

良いねえ、Cocco。どこからどう見ても間違いなく病んでいるね。すうっと私の酔っ払った頭と心に染み込んでいった。

酔いの醒めた今、それを聴きたいとは思わない。けれど、その時は不思議なほどに無性に聴きたかった。それはとても晴れた日で。

という事で、ここ最近の私の3つのブーム再燃でした。

ピアノの練習ブームが再燃するとすごく助かるんだけどなあ。

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コメント

ブーム再燃2について:
そうそう、福島くんはそうでなくっちゃね~。最近、当たり障りのない面白くないこと書いてるな~って思ってた。福島くんも大人になったなぁ~というか、年をとったなぁ~というか。生涯、歯に物着せぬ泉谷しげるでいて下さい。

投稿: クロサバ | 2009年6月 5日 (金) 15時32分

開き直りの境地って大事だよね。
オレも良い意味で開き直らなければいけない
状況なんだ。
怒られるだけで済まないかもしれないけど、
座して死を待つよりはよっぽどマシ。
異端児になるか、先駆者になるか。
どっちでもいいや。

投稿: ヤマ | 2009年6月 6日 (土) 01時11分

クロサバさんへ
ありがとうございます。書きたいように書いていこうと思います。でも、やっぱり最近ぬるかったですか。ですよね、ちょっと日和ってましたね。
気持ちを入れ換えてやりたい放題します。

投稿: ふくしまたけし | 2009年6月 6日 (土) 19時04分

ヤマへ
酒は超こええな。

投稿: ふくしまたけし | 2009年6月 6日 (土) 19時05分

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