WBC観戦記、ライブ後日談
野球の国際大会、ワールドベースボールクラシック(WBC)が開幕した。
我らが広島カープからは、候補選手の時点で栗原、永川、石原の三選手がエントリーしたが、結局最終メンバーには捕手である石原のみが残留。私自身はいささか不満の残る人選であったが、様々な要素を勘案するに、不満ながらも納得する。
栗原健太という男は、近い将来日本の四番を背負って立つ打者であると断言出来る。今回の選考結果は、将来の事を考えて妥当だと思う。
さて、初戦の中国戦こそ私もライブをしていた為に観戦する事は能わなかったが、昨日の韓国戦はのんびりと自宅テレビにて観戦。14対2の7回コールドゲームという予想外の決着に驚愕した。
相手の左投手を想定して先発出場した横浜の村田と内川が文句ないほどの結果を残し、原監督の采配がズバリ的中した結果となった。
上記二人に関してもそうだが、一番ライトで先発出場したイチローの技術、またその駆け引きの妙に私は随分と関心させられた。
初回、先頭バッターとして打席に立ったイチロー。いきなりのライト前ヒットで攻撃の口火を切ったが、この打席には感嘆の息を洩らさずにはいられなかった。
第何球目かは失念したが、ファーストストライクである内角のストレートボールをイチローは見逃した。結果論になってしまうかも知れないが、この見逃しが後の大量得点を導く大きな要因だったのではないだろうかと私は考えている。
イチローのバッティングを総合的に見れば、あの内角ストレートは手を出しても問題なかったと私は思う。しかし、そこを「敢えて」見逃した。狙うは相手ピッチャーのウィニングショットであるスライダーであった。直後に投じられたスライダーを綺麗にライト前に弾き返し、出塁となったが、内角ストレートを安易にヒットにするのと、ウィニングショットであるスライダーを弾き返すのでは、後の展開に大きな差が生まれる。
相手ピッチャーの心理としては、失投を打たれるのと、ウィニングショットを打たれるのでは心理的なダメージは全く違う。気持ちの切り替えが出来ない内に、二番中島、三番青木が続き、初回の三点という結果に繋がった。見事な攻撃であった。
それは一種のギャンブルであった。ウィニングショットというのは、極めて打ちづらいからこそウィニングショットたりえるのだ。実際、縦に割れるそのスライダーは、かなりの切れ味であった。それを打たれれば、当然投手に混乱が生じる。そこに付け込んだのだ。
初回のもう一つの見せ場であった六番内川の三塁線を破る二点タイムリー二塁打も非常に素晴らしかったが、その裏にはそういった相手ピッチャーの混乱が原因としてあったのではないだろうか。そんな勝手な想像を膨らませながら観戦すれば、とても面白い序盤戦であった。
正直に言えば、その後の大量得点により、私自身からは試合を観戦する上での緊張感は失われてしまい、後半はうつらうつらと眠りながらであった。ゲームとしては、ワンサイドゲームはつまらない。自分勝手な野球ファンの、自分勝手な理屈だ。
いずれにしても、昨日のような楽な試合展開は今後は到底望めないであろうし、今後の二次リーグも引き続き楽しみではある。日本代表の更なる活躍を心より楽しみにしたい。
さて、以下は全く別の話題。
珍しく自分のライブについての後日感想を。
数日前、高円寺のアフターアワーズという店でライブをした。共演はヴォーカルの「おおたりこ」さんという方。
おおたさんとは全く面識もなく、急遽ピアノの伴奏者を探していた彼女から人伝いに演奏を依頼され、当日本番となった。
正直に言えば、さほど期待もしていなかった。彼女の歌は聴いた事がなかったし、過度の期待をしていって裏切られる事を恐れていたのか、「今日は大人しく歌の伴奏かな」という、それぐらいの気持ちで臨んでいた。
蓋を開けてみて驚いた。
あまり期待もせずにその日に臨んだ自分を心から恥じたくなるほどに、素晴らしい歌い手であった。
本番前に軽くリハーサルをした時点で、「あれ、この人ひょっとしてめちゃくちゃ良くないか」と思ったが、本番の一曲目、「Love is here to stay」を1コーラスも歌い終わらない内に、その思いは確信に変わった。「油断は厳禁だ、ボヤボヤしてると持ってかれちまう」と。私の中の危険察知装置が歓喜の警報をけたたましく鳴らしたのがわかった。
声質や音程、リズム感という表現力もさることながら、そこに内包される抜群の歌心、それは本当に素晴らしかった。
その歌を前に置いてピアノを弾かせていただく事は、何とも言えない至福であり、愉悦であった。これまでに歌と共演して、そういった思いを抱いたのは本当に数える程度だった。勿論嬉しくなった私は、演奏の面では完全に暴走した。なので、総合的な結果として、つまり音楽的に総括して良かったのか悪かったのかはわからない。仮に後悔した所で後の祭だ。アフターフェスティバルだ。が、途徹も無く愉しかった。それ以上でもそれ以下でもない。
ステージ後に話を聞けば、私とさして年齢も変わらないとの事。世の中は広い。素晴らしい音楽家がいるものだ、と感嘆せざるを得なかった。
彼女に関しては、普段どういった所で歌っているのかは知らない。けれど、このブログを読んでいる方で、ジャズヴォーカルのライブに興味をお持ちの方がいれば、インターネットなり雑誌なりを調べて彼女のステージを観に行くと良いと思う。素晴らしい歌手だ。
私も気を取り直して、日々の練習に取り組まなくてはならない。またいつ何時、そういった素晴らしい音楽家と共演するやもわからない。
その時の為にも。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 市川修 in New York(2017.10.31)
- ピアノ教室ブログ更新(2017.09.29)
- Abdullah Ibrahim 2015年の来日のこと(2015.10.27)
- 短期集中連載「Abdullah Ibrahimの魅力に迫る~第四回:2013年にAbdullah Ibrahimを観に韓国まで行った時のこと」(2015.10.07)
- 短期集中連載「Abdullah Ibrahimの魅力に迫る~第三回:Abdullah Ibrahimのルーツを辿る」(2015.10.06)
コメント