1月31日
三年前の今日、あなたが死んだ。
全く現実味もなかったけれど、やっと最近あなたが死んだっていう事をリアルに受け止めるようになってきた。だからあなたの事を少し。
あなたが、死んだ。
ぼくは、自分でも不思議なくらい淡々としていた。最愛の人が事切れる瞬間を目の当たりにしていたにも関わらず、冷静だった。
心電図の規則的なリズムを刻む電子音が徐々に遅くなり、終いにはぴいいいいっというロングトーンに変わった。
ああ、死んじゃった。
そう、思った。
たったそれだけだった。
1月12日に頭の血管が切れて倒れてから、ぼくはずっとあなたの傍にいた。だからかも知れない。日々、「良くないですね」なんていう医者の言葉を聞いて、出血のせいでばんばんに腫れた脳のCTを見て。今更死んじゃいましたって言われた所で動じようがない。
だから死んだ時だってとても冷静だった。
ひょっとしたらそれはとても幸せな事だったのかも知れない。ぼくは単純にあなたの近くにいたかったんだもの。死に目まで見れたし、あなたの骨も食べた。幸せかも知れない。不遜に言うけれど、ぼくは誰よりもあなたの事を愛していた。
ぼくはあなたに人生を動かされた。
あなたに会ってなかったら、きっとピアニストなんかになっていなかったと思う。うじうじと、面白いんだか面白くないんだかわかんないような人生を生き続けていたかも知れない。
あなたは、つまらない人間のつまらない人生を、変えてしまった。何だかうきうきするもの。お陰で今日もうきうきしてた。
ぼくはあなたが死んだ時に、反射的に「京都を出よう」って思った。あなたの素晴らしさを、ぼくが世界中に伝えてやろうと思った。
まだまだピアニストとしても人間としても未熟だけれど、ぼくはこれからも日々精進して、もっともっと良いピアニストになります。他人からも世間からも評価されるように頑張ります。
人から褒められたその時に、エラそうに言ってやるんだ。
「ぼくの師匠は市川修ですよ、当たり前じゃないですか」
って。
だから、大丈夫。
早いですね。三年間。
世界一のピアニストはねえ。
市川修で決まりなんだよ!
うん
何だ
まあ
あれだ
今日はちょっと暗いけど許してね。
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