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2008年10月31日 (金)

過去の堆積である現在

ブログ、というものを書き始めて凡そ三年になる。始めた当初はここまで続くとは考えてもいなかった。一年ももてば良いか、というぐらいで。ここに書き散らかされている文章の質の低さを考慮に入れなければ、我ながら本当によく続いているなと感心する。続ける事は、本当に大事な事なのだ。音楽などは、その最たるものであろうけれど。

比べるのはどうかと思うが、一人の女性と三年も付き合った事はない。恐らく私が20代の前半の時分に付き合っていた「ミヒロさん」が、私がこれまでに一番長く付き合った女性であろうと思う。二年と半年くらいではなかったろうか、と思うのだが、どうだったろうか。

その「ミヒロさん」とは、今年の4月だか5月だかに、共通の友人の結婚式でばったりと再会した。変わらず明るい彼女であって、「ああ、相も変わらず良い女ですな」と私は彼女に面と向かって言った記憶がある。「花の慶次」的なイディオムを使えば、「匂い立つような女ぶり」という事になる。私は彼女を口説きたかった訳ではないのだが、平気でそういう事をぺらぺらと口にする所がある。拭い難きカルマとしか説明はつかない。

全ては「過去」の事で、私には今はその時とはいささか事情の異なる「現在」がある。過去の堆積が現在である事に何の疑いの余地も無いが、時間は不可逆であり、現在と過去は決して同居しない。ミヒロさんと私とは、二度と人生を交錯させる事はない。そんな事を比較的直観的に、そして極めて無根拠に思うに至った。

人生足別離。

さよならだけが人生だ。

それはそれで良いではないか、と。

斯様に、ミヒロさんとの思い出は私の中で随分と美しい過去の物語として記憶されている。実際に付き合っていた時は、愉しい事ばかりではなかったが、後から振り返ればそういうものだ。

こんな事を思い出しながら呑む酒は、切ないながらも美味い。暗く乱雑なバーで、過去の美しい恋の話を思う。マスター、そこにあるボンベイサファイアをロックでいただけますか。ジンの薫りが鼻腔をつく。決して弱くはない酒だが、すうっと喉をくぐり、食道を通って胃を濡らす。一つ、大きくため息をつく。

一連の所作。中井貴一辺りが演じれば、情感溢れるシーンとなりそうだが、あまつさえ私のような面白ピクニックフェイスが演じても、それなりに形になってしまう。つまり完全に状況設定の勝利である。恐らくはザブングル加藤、バナナマン日村といった辺りが演じても、同様だろう。

昔の恋を思い出すザブングル加藤
Katou

ジンを呑んで深くため息をつくバナナマン日村
Himura

といった具合である。なかなかの塩梅だ。

昔の事は美しく見える。往々にしてそうかもしれない。私たちが生きている「今」は、それぞれに苛烈で、時に優しくない。それら全てがそのままリアルであり、私たちは皆その「リアル」を受け入れる事無しに「今を生きる」事は許されないのだから。それゆえに、私たちは過去を美しくする傾向にある。

Things ain't what they used to be.

もう昔のようにはうまくいかないよ。昔は良かったね。そんな言辞を弄びながら。

(ちなみに本日は、「何かに特化したブログって良いよね」みたいな事(ラーメンブログ、釣りブログとか)を書こうと思ってた書き始めたのだけれど、書いている内に話があらぬ方向に飛んでいってしまった。もう修正は不可能です。MAGI、制御不能を示しています。このまま前進を続けます)

そんな私でも、ひたすらに醜くしか思い出せない過去と言うものもある。確か、ミヒロさんの後に付き合った女であったが、別れた際には、「ああ、これでまた一つの恋が終わってしまった」と感傷に浸るどころか、「助かった!マジ助かった!危なかった!」と安堵したのを覚えている。

相手を仮に名前をA子としようか。

私が寝ている時、顔の傍らに何かの衝撃を感じた。

そこには、つまり枕の横の布団の部分には、鋭く銀光りする棒状のもの、もっと分かりやすく言えば、包丁が刺さっていた。A子が般若の形相で私を見下ろしていた。

その時私はドラクエの作戦であった「いのちをだいじに」を思い出した。まずい、私はベホイミもザオリクも使えないというのに、さまようよろいが私の命を狙っている。そう直感した。

たたかう
→にげる
まほう
どうぐ

たけしはだっとのごとくにげだした!

しかしAこにまわりこまれてしまった!

たたかう
→にげる
まほう
どうぐ

しかしまわりこまれてしまった!

以下略。

途轍もなくバイオレンスな日々であった。

私がツアーに出かけている最中に、A子から三行半のメールが来て、「やった!これでオレは自由だ!革命成功!万歳!」と私の中の革命戦士たちが雄叫びを上げたが、ツアーから家に帰ってみると、家の中のものが軒並みなくなっていた。

どうやら新しい男と私の家の中に入り、私の家をその男と共に荒らしていったようだが、そんな事でも構わない!やっとこれで私も自由に!とひどく喜んだのを覚えている。あんな恋愛はもう二度としたくない。

そういった過去があって今がある。先ほども途中に書いたように、今日は徒然に書き始めたが、着地点は全く見えていなかった。

私は今が好きだ。

はい、着地成功。

10点満点。

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