男塾塾生エルヴィン・ジョーンズ
Elvin Jones.
えるびん・じょーんず。
エルヴィン。
彼の名前をひたすらに連呼したい。素晴らしいドラマー、エルヴィン・ジョーンズの名を。
以前から欲しいな、と思っていたレコードを、偶然にお茶の水のレコード屋で発見した。
John Coltrane Quartet の『Live at Birdland』。安かった事もあり、即座に購入した。
メンバーは、サックスにコルトレーン、ピアノにマッコイ、ベースにギャリソン、ドラムにエルヴィン、という無敵のカルテット。このメンバーによるカルテットは、ドラクエで言えば勇者+戦士+戦士+戦士というぐらいに攻撃的なカルテットだと私は考えている。サッカーのフォーメーションで言えば0-1-9。野球で言えば全員エースで4番。後先は考えない。攻撃あるのみ。Dead or alive. All or nothing. 大分頭の痛いバンドだが、間違いなく最強(最凶)の攻撃力を兼ね備えたチームである。
今日はこのアルバムをひたすらに薦めたい。しかし、普遍的な大絶賛は不可能である。何故ならばオフェンスの事しか考えていない、極めてバランスの悪いアルバムだから。
しかし、今流行の言葉を使えば、「そんなの関係ねえ!!」
私的満足度は10段階評価で15。私にとっては最高のアルバムだ。
A面とB面を通して聴いて素晴らしかったが、敢えてA面の一曲目「Afro-Blue」の素晴らしさ、そしてドラマー、エルヴィン・ジョーンズのアホさを今回は大絶賛したい。
エルヴィンは、アホだ。そして、最高だ。
無論、コルトレーンもアホだし、マッコイもアホだ。馬鹿みたいにデカいシングルノートをひたすらに奏でるギャリソンもアホだ。
だが、エルヴィンのアホさには脱帽する。
まず、音が違う。ピシっ、ピシっという音ではない。ドンガラガッシャングアラバキー!という音色がする。それはドラムの音というよりは、大地の地震、そして天空の雷鳴という音色だ。何という太鼓だ。それは大自然の音なのだ。
「Afro-Blue」という楽曲において、彼の類稀なるアホさを我々リスナーは享受出来る。コルトレーンが奏でるアフリカの大地を連想させるテーマの後、マッコイのエモーショナルなソロが始まる。そのソロが熱を帯びてくるにしたがって、エルヴィンの「野性」がどんどん解放されていく。それは獣の咆哮だ。アフリカの大地に鳴り響く、猛々しい雄叫びだ。
さて、ここまで読んでこのアルバムを聴いてみたい、と少しでも思った奇特な方の為に、私なりにこのアルバムの聴き方をレクチャーしたい。
まず、私はLP盤で聴いたが、そこはどうでも良い問題だ。CDだろうとカセットテープだろうと何だって構わない。大事な問題はまず一つ。
近隣家庭との関係が大分気まずくなるぐらいの大音量で聴く事。
これである。
それを考えると深夜に聴く事はあまりオススメできない。近所との良好な関係が崩れる事は必死だからだ。家の近くで大きな音で道路工事などをやっていれば、もってこいのチャンスだ。騒音公害は他人のせいにしてしまえば良い。ステレオのボリュームを右に回せる所まで回してしまおう。
さて、普段ジャズなど聴かないという方は、ひょっとしたら以下のようなイメージをジャズ鑑賞に抱いているかも知れない。
「ぼくはうっとりとビル・エヴァンスのレコードに耳を傾けた。少し感傷的になっているのかも知れない。昨日会ったガールフレンドの事がふっと脳裏に浮かんだ。とびきりドライなマティーニがぼくの喉を流れていった。」
五月蝿え。喧しい。
このアルバムを聴く時は、呑んで良い酒は焼酎かホッピーのみだ。それ以外は、水道水でも呑んでおけ。村上春樹の小説の登場人物みたいな真似をしてはならない。
女子と共に聴くのも罷りならない。いや、というよりも、女子と共に聴くと、多分フラれるから安心した方が良い。そもそも、女子供はこのアルバムは聴かなくて宜しい。このブログも同様だ。女子供は読まなくて宜しい。
さあ、中学二年生男子の悶々とした性欲のようなエネルギーを胸に抱えたら、この「Afro-Blue」に耳を傾けよう。
わあーーー!とか、ぎゃあーーー!叫びながら聴こう。
聴き終わった時には、間違いなく射精後のような快感と罪悪感と達観の間で揺れる筈だ。
以上、スイング男塾から、一号生筆頭、福島剛がお届けしました。
しばらく、このアルバムは危険だ。
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