Kになるところだった
二日連続してブログを更新しただけで、何だか自分が偉い人になったような気になる。間違えるな、単に暇なだけだぞ、と自分に言い聞かせなくてはならない。
朝、眠い目をこすりながらピアノを弾いていたら、私の復活したばかりの携帯電話が鳴った。珍しい、私に用のある人間などまだいたのか、と思い、携帯を見ると、そこには075の市外局番から始まる電話番号が通知されていた。京都から、である。
私の携帯電話にはその番号は登録されていなかったが、私はその電話の主は誰なのかすぐにわかった。下4桁の電話番号が0110だったのだ。110番。そう、警察である。
私は電話に出た。電話口で男が言った。
―こちらは福島剛さんの携帯電話で間違いありませんか?
そうだ、と私が答える。
―ワタクシ、京都下鴨警察署刑事課の○○と申します。お伺いしたい事があるのですか、今お時間宜しいですか?
構わない。私は言う。私は世間の人々ほど忙しくないし、何より不測の事態に私は少し心躍っていたのだ。
用件は以下のようであった。
京都市左京区岩倉幡枝において、今年の1月15日、殺人事件が起きた。犯人は依然として逃走中、逮捕されていない。そこで、京都の警察にあるデータベースの中から犯人の可能性のある人間を片っ端にピックアップし、一人一人事情聴取をしている、という事だ。
つまり、その殺人事件の容疑者の一人として私がピックアップされた、とこういう訳だ。
当たり前だが私は無実である。今年の1月15日と言えば、私は晴れて卒業論文を出し終わった日なのだ(http://whatdisay.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_1ebb.html参照)。家に帰って発泡酒で祝杯を上げ、TVドラマ版「東京タワー」における速水もこみちのまずさについてグチグチとケチをつけていた所なのだ。人を殺している余裕などは全くない。
私が容疑者の一人としてピックアップされたのにはいくつかの原因があった。どうやら、私の風貌や背格好、年齢等が犯人にいくらか似ているとの事、犯行現場からそう遠くない位置に私の家があった事、そして何より決定的なのは、私は過去に数度下らないケンカで下鴨署に世話になった事がある、という点だ。「二度あることは三度ある」の理屈で、「つまりこの福島という若い男は、人をも殺しかねない」と判断されたわけだ。全くもって迷惑な話だが。
私はふとカフカの「審判」という小説を思い出した。私は或いはK(カー、と読んでいただきたい)のようになるのだろうか。そんな事を思いながら、刑事との会話は進んだ。
しかし驚いた事なのだが、下鴨署刑事、私の事を疑うだけあって、よく私の事を調べている。私が大学に九年間も在籍した事、休学中にインドに行っていた事、もちろん過去のいくつかの些細な事件の事、そして私がピアノを弾く、という事や、柔道歴が十年以上ある、という事まで。おそらく彼は私のちんこの皮が何ミリ余っているかまで知っているに違いない。警察の捜査能力には改めて驚いた次第だ。
私には今回の事件に限っては落ち度はゼロであるし、完璧な無実である訳だから、思いの外堂々と刑事に接した。どうやら刑事も私には脈が無い、とみて、今度は私に目撃情報などを尋ねてきたが、私にはその目撃情報もない。
およそ30分近く刑事とは電話で喋ったが、電話を切ってから後、私は気になってその事件の事について調べてみた。犯行現場の近くにある精華大学のまんが学部の生徒が殺された、という所までは私も当時のニュースなどで見て知っていたのだが、詳しい犯人の情報などは殆ど知らない状態であったからだ。
調べたのは、京都市下鴨警察による以下のページだ。
http://www.pref.kyoto.jp/fukei/site/sousa/simogamo_i/index.html
犯人像の項目の「20歳代半ば」というのはあながちはずれでもないが、私は不謹慎ながらその後を読んで少し笑いそうになってしまった。
「興奮すると、顔や上半身を左右に振り「アホ、ボケ」を連発し、目の焦点が合っていない。」
ちょっと待て。私はアホ、ボケなどと連発した事はこれまで一度もないぞ。焦点は大体合っている。
更に、警察による事件当時の再現映像、これは何かのコントか。
↓
http://www.pref.kyoto.jp/fukei/site/sousa/simogamo_i/img/saigen.wmv
私のうだつの上がらないボンクラ人生を細部に渡って調べている暇があれば、もっと有効な捜査をしたらどうなのだ、とこのページを見ながらため息をついた。
いやはや、しかし殺人事件の容疑者になるとは、私も出世したものだ。
「頼むから名前の後に‘容疑者’がつくような形で世間で有名にならないでくれよ」と何回か言われながら育ってきたが、今回は危なかった訳だ。
私は、ピアニストとして世間に広く認知されたいのだ。容疑者として、ではない。
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コメント
この動画はコントでしょ!
警察はマジメにこの再現動画作ってるんだよね…。
結構ヒマなんじゃないの??
たぶん警官が犯人役とかやってるんだよね?
「アホ、ボケ!」って言いながら絶対笑ってると思う!!
いいもの見させてもらいました。
ありがとう。
投稿: りん | 2007年8月 9日 (木) 14時25分
なかなか笑わせてもらったぞ。しかしアホボケって関東人も使うのか?その言葉以外の動きは酔っ払ってカップルに理不尽にからんでいったお前の動きとよく似てた所を見ると、警察の目の付け所もなかなかやな(笑)盆は京都に来るのか?その節は連絡しろ。憧れのアウトドアにでも連れていってやるぞ。
投稿: 菅原 | 2007年8月10日 (金) 03時30分
りんさんへ
はい、体を張って笑いを取りにいきましたよ。この話題は、「滑らない」ですねえ。色んな人に「ぼく、こないだ容疑者になってねえ」という話をするんですが、今の所一回も滑ってないです。
投稿: ふくしまたけし | 2007年8月15日 (水) 23時31分
菅原さんへ
このお盆は、微妙にアレコレと用事があって東京でした。アウトドア、行きたいっすよね。来週に京都に行くんですが、その時は毎日演奏の仕事があるので、昼の遠出は無理かなー。また、夜にでも菅原さんちに遊びにいければ良いんですけど。
投稿: ふくしまたけし | 2007年8月15日 (水) 23時33分
あの動画はどうみても福島さんやろ!
警察すげー
投稿: りこ | 2007年8月20日 (月) 00時52分
りこちゃんへ
警察すごくないし、あれはどう見てもぼくではない。
書き込みしてくれるなんて珍しいね。ありがとう。出来れば今度おっぱいをさわらせて下さい。
投稿: ふくしまたけし | 2007年8月20日 (月) 19時41分