愛憎入り交じりつつ
故郷に対して、愛し過ぎるがゆえに悪態を吐きたくなる時がある。
救えない街だ。
終わっている。
ゴミだめもいい所だ。
何故だろう、私にはまるで悪気はない。小岩という街に対して、悪態を吐く時、私はひどく穏やかな気持ちになる。
先日の事だ。行きつけの立ち飲み屋で私は酒を飲んでいた。
初老の男性が横に立った。今日は博打に負けた、と言う。パチンコですか?と私が問えば、彼は競輪だ、と答える。3番が落車しやがった。彼が言う言葉に私は適当に相槌を打つ。
彼は、カウンターの下で右手の小指を立てた。
今日競輪勝ったら、コレ買いにいこうと思ってたんだよ。
残念そうな彼の顔から、彼が本当に買春を楽しみにしていた事がわかる。
残念でしたねえ。大丈夫ですよ。女の子はいなくなりませんよ。ちゃんと待っててくれますって。
私も話を合わせる。
オレはさあ、酒よりもタバコよりも女が好きなんだよ。金があれば毎日出したいよね。
彼は卑猥な腰つきを見せてくれる。
半袖の脇から派手な刺青が見える。
腐った街だ。
救いようがない。
でも、私は小岩が好きだ。
なかなか離れられない。
一杯210円の生レモン酎ハイを煽った。
良い、酒であった。
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