声に出して読みたくない日本語
オニサン、マッサージイカガデスカ?
私の住む街小岩では、幾度となく投げ掛けられる言葉である。もはや大阪でいう所の「もうかりまっかー?」に近い、特殊な地域性を帯びた一種の挨拶と認識して良いだろう。
女性は好きだが、金が無さ過ぎて女など買える立場にない私であるので、いつもは苦笑いを返すので精一杯だ。別段、自らの見当違いな潔白さをアピールするつもりなど毛頭ないが、私はこの類いの事で女性を買った事がない。ある意味では世間知らずだと言っていい。しかし、「オニサン、マッサージイカガデスカ?」の類の客引きには幾度となく声をかけられた事がある。今日はその客引きに関する思い出を綴ると同時に、ブログというメディアにおいて、言葉刈りの影響はどこまであるのかを調べてみたい。以下、危険なワードが羅列される。人権屋さんとグリーンピースと文部省とPTA、かかってこんかいっ。
さて、先ほども触れた私の故郷小岩は、極めて治安の悪い街である。先日は若者同士のリアルな殴り合いを見た。鼻血が炸裂していて花火のようで見事だな、と思いながら傍観していたのだが、数十人の野次馬の中には知り合いもいた。「あっ、どうも」なんて挨拶を交わしながら殴り合いにしばし見入った。昨日は私の家の近所が警察達によって封鎖されていた。殺人事件か何かがあったらしい。そういえば、1ヶ月ほど前の英会話講師美人外国人女性殺人事件も小岩で起きた。何とも仕様がない。
閑話休題。日本の場合、治安が悪い地域には、風俗店が乱立する。吉原などの江戸時代からの固有の文化を持つ地域を別にして、新宿歌舞伎町、大久保、錦糸町、そして小岩。よく色んな業種が思い付くな、と感心するほどである。そして、それらの店の客引きというのは、一つの伝統芸能であると私は感じている。偽悪的なまでに猥雑な言葉を並べ立て、その中で独特の言葉のリズムを形成する。日本語ラップを歌いたいものは、彼らに一度弟子入りするべきである。以下、私がこれまでに聞いた客引きの名文句である。ここからが言葉刈りと私との戦いだ。
まずは小岩の某おっぱいパブA店の客引きである。地蔵通りという悪名高い小路地があるのだが、その通りを抜けた所でやたらと高いテンションの男が私に話しかけてくる。
「お兄さん!おっぱい揉みませんか!?手マン・クンニ・指入れオッケー!40分間乗りっぱなし!!おっぱいパブAいかがっすかー!?」
どうして笑わずに通過できようか、いやできまい。私も反語を用いてその笑撃(うわあ、ダジャレだぁ)を表すほどである。
次いで、明らかに五十歳を超えた中年女性が私に喋りかけてきた時の事を。彼女はその言葉のイントネーションから、明らかに日本人でない事はわかる。母国から日本にやってきた折には、幾多のドラマがあったに違いない。顔にはその苦労を物語る、年輪のごとき皺が刻まれていた。彼女が口を開く。
「オニサン、朝マデチンチンタツヨ。イチマンエンネ。」
勃たねえよ!!と突っ込みたくなるのだが、彼女の自信の根拠はまた気になる所であった。
最後に一番の笑撃。小岩駅近くの路地に入った時のシンプルな一言である。明らかに風体の怪しげな男がニヤニヤと笑いながら、向かいから私に近付いてくる。男は右手に拳を握り、私の前にそれを出す。すわ、戦か!?と私も心持ち身構える。しかし、男はその拳の人差し指と中指の間に自らの親指を挟み込み、私に大声でこう言った。
「お兄ちゃん!マンコどう!?」
シンプル・イズ・ザ・ベスト。私はついつい吹き出してしまった。
「あ、笑ったら遊んでかなきゃダメだよー」と男は更に言うが、それこそ笑わずにいられるか。
「ごめーん、また今度ねー」と苦笑いしながら言うのが私には精一杯であった。
素晴らしき風俗客引きの文化。彼らにはより一層の技術の研鑽を望む。また、面白いものに出会った時には紹介する。
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