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2007年3月 9日 (金)

大卒~それでも良いと思っている~

1998年、今から9年前、京都府立大学に進学するために、私は東京から京都へやって来た。別段、特別に行きたかった大学であった訳ではない。もう一つ合格していた東京の某私立大学とどちらにしようか悩んだ末、10円玉を投げて、その裏表で私は京都府立大学を選んだ。人生の重要な選択を、18歳の私は極めていい加減に選んだ。

その京都府立大学を、今春私は卒業する。今日、卒業認定者一覧の所に私の名前があった。勿論大学院ではない。普通の人達ならば4年で卒業することの出来る、学士の方だ。しかし、私は晴れて大卒という資格を手にした。今後一切学歴と関係のない世界にいく私が学歴を手に入れた所で何という事もないが、一つのけじめであるために、嬉しいものである。

9年という、この長期間には秘密がある。普通ならば8年が限界だろう、とお思いかもしれない。勿論、一番の秘密は、私の怠惰である。

もう一つの理由は、休学である。私は、2年間大学を休学していたのだ。

その間に私は何をしていた訳でもなかった。アジアをふらふらしながら、自分がどこへ行くのだろうか、自分は何者なんだろうか、そういった青臭い悩みをうじうじと抱えていた。そもそも、休学する時には、大学を辞めるつもりでいたのだ。つくづく私は格好悪い。

大学の勉強は、20歳前後の私には何一つ魅力が無かった。私は英文科であるが、致命的な事に英語が苦手であり、勉強は出来ず、それ故に大学から足が遠ざかった。

無目的にアルバイトをして、親から仕送りをもらい、その金を使ってケチな博打に明け暮れた。素面でいるのが怖いから、酒も毎日飲んでいた。

ピアノを弾き始めた当初も、あまり生活は変わらなかった。だらだらと、だらだらと、私は日々を浪費していた。

ある事があって、辞めるつもりの大学に復学してからも、一年間は私の生活は変わらなかった。

25歳ぐらいから、不思議に大学の勉強が急に愉しくなり出した。英語は相変わらず苦手だったが、英文学やアメリカ文学の愉しみ方が、何となくわかって来た。学校に行くのが、ほんの少し愉しくなった。本格的にライブ活動を始めたのもこの頃だったような気がする。色んな物事の歯車が、徐々にかみ合って、少しずつ回りだしてきたのかも知れない。

昨年から今年にかけては、たっぷりと勉強を愉しんだ。私の卒業論文はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』について。「不確実な世界」について論じたが、結局は中途半端な論文に終わってしまった。それでも良いと思っている。愉しかったから。改めて、私は文学が好きなのだと実感した一年だ。

相も変わらず私は下らない人間である。私のような下らない人間を見て、眉をしかめる人も少なくない。それでも良いと思っている。人から褒められるのは確かに嬉しいが、それはあくまで副産物だ。人から白い目で見られ、批判されても、好きな事をやっている今は、私にとってひどく幸せだ。文学も音楽もとても愉しい。それで良いじゃないか。金なんていくらだって後から付いてくる。どこへも行けなかった20代前半の頃に比べれば、私の生活は見違えている。

4月から東京で暮らす。不安は勿論ある。それでも良いと思っている。最近付き合いだしたばかりの恋人と離れて暮らさなければならないのがいささか残念だが、何とかなる。楽観主義も度を越しているが、何とかなる。

私は晴れて大卒になった。何も意味なんて無いのだけれど。

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コメント

おめでとう~。
福島が東京に来る4月からは、なんだか楽しくなりそうな予感がしています(今も楽しいが)。よろしくね。

投稿: torii | 2007年3月 9日 (金) 17時34分

中々大学に9年間もいられる人はいないよ!ある意味、あなたは幸せ者だ。大学生というのは人生の中でも特別なポジションだものね。高校生ほど縛られず、かといって、社会人ほどの責任もない。人生の方向性を悩んだり、青春を謳歌するには、人生の中ではベストポジション。早々大学を卒業して就職しても、会社の歯車になり、社会の重圧を受け、毎日追われるような日々・・・ってな場合も多いからね。大学に長くいれたから、お師匠さんにも会えて、今の道にも進むことができたのかもね。卒業、おめでとう。

投稿: くろ | 2007年3月11日 (日) 01時07分

toriiさんへ
ありがとうございます。しばらくはぼくも仕事を見つけたり何やかんやで忙しくなると思います、逆に言えば忙しくしたい。でも、それと並行してライブ活動も算段を立てたい、色々とお世話になることもあるかも知れませんが、どうぞ宜しく。


くろさんへ
青春を謳歌する、というよりは、精一杯無駄な時間を過ごした、という印象です。勿論無駄な事が悪いとも限らないと思ってます。その挙げ句の様々な出会いは、あなたがおっしゃるように有意義なものだったと思っていますし。
とりあえず、一区切りですわ。ありがとうございます。

投稿: ふくしまたけし | 2007年3月12日 (月) 22時03分

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